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午前の授業が終わり、待ちに待った昼休み。

私達はお弁当を食べるより先に、相馬君のクラスをこっそり覗き見することにした。

……といってもこんな大人数で行くと目立ってしまう為、一先ず私と夏帆だけ先に相馬君を見に行こうとAクラスまで足を運ぶ。

一方的ではあるけど、ようやく相馬君の顔を見れることに、胸の高鳴りは最骨頂にまで達してきた。


「ねえねえ、どの人が相馬君かな?」

一先ず私達は空いてる扉から彼を探してみるも、私が知っている相馬君の姿が見当たらない。

その代わり、窓際に人だかりが出来ているのを見つけ、もしやと思い目を凝らしてみると、私はそこで絶句した。


「……え!?相馬君!?」

それは今まで見てきた彼の風貌とあまりにも違い過ぎて、思わず心の声が漏れ出てしまう。


目の前に映る相馬君は、確かにクラスの女子が言った通り、あの存在感を主張する黒縁眼鏡が外され、彼の素顔がとても映えて見えた。

普通だと思っていた目は実は意外に大きく、くっきりしていて、元々爽やかな印象だったけど、眼鏡がないせいか、顔がスッキリして更に拍車がかかった感じ。

髪も今までは真っ直ぐな無造作ヘアーだったけど、少し短くなってサラサラの髪質が生かされた束感のあるツーブロックで今風のスタイリッシュな髪型になっている。


……うそ。

まさか、あの人が相馬君!?

やばい。今までの相馬君も格好いいけど、こっちの相馬君も格好良いっ!!
ていうか、もうどの相馬君も格好いいっ!

なんて、深い沼落ちをしてしまったが故に、結局どんな姿でもときめいてしまう為、身体を震わせながら心の中で暴走し始める。

「っえ、あの人めっちゃイケメンじゃん!今までなんで噂にならなかったんだろう」

その隣では夏帆も相馬君の容姿に胸を撃ち抜かれたのか。頬を染めながらとても高揚とした表情で彼に見惚れていた。

そこで私は、はたと気付く。


……まずい。

これは相馬君を狙う子がこれから増えてしまう。


私は目を奪われている夏帆の様子や、相馬君を取り囲みながら色目で見てくる女の子達にどんどんと不安が募っていく。

ていうか、相馬君は元々素敵な人なのに、容姿が変わっただけでこんなにも彼を見る目に違いが出るなんて……。

仕方のない事だとは分かっているけど、何だか悔しい気持ちに私は体が震えてくる。