__あれから一週間後。


私達は連絡先を交換し合い、相馬君が入院中の間にちょこちょこ連絡を取り合っていた。

それから外傷がそこまで酷くないため、無事に早期退院出来たと教えてくれた数日後、今日から登校するという連絡を受け、私は朝からとっても上機嫌だった。

あの日以降私達は会う機会がなく、ようやく彼の顔を見れることに胸が弾む。

そして、今でもあの時抱きしめ合った事を思い浮かべると、ニヤけ顔が止まらなくなる。

これって、少なくとも相馬君は私の事を気にしているって事でいいのだろうか。

でも、相馬君はとても優しいから単純に私を心配してくれただけなのかもしれないし、私に触れて喜んでいたのも、今までずっと霊体だったからかもしれない。 

結局瀬川さんの気持ちもどうなのか分からないままだし……。

不安材料はまだまだ残ってるのに、勝手に期待してはダメだと何度も自分に言い聞かせる。

そうやって、幾度となく舞い上がる気持ちを何とか必死で抑えながら、私は教室の扉を開く。


「ねえねえ、聞いた!?例の事故に遭ったA組の相馬悠介って人が登校してきたんだって!」

すると、自分の席に座るや否や、待っていましたと言わんばかりに、夏帆は挨拶もなしに突然私の隣に駆け寄ってきて興奮気味にそう話す。

「そうなんだ。それは良かったね」

私はまだ夏帆に相馬君との関係を伝えていない為、何とか悟られまいと、わざとらしくならないように自然体を装った。

それよりも、何で相馬君の事で夏帆がこんなに興奮しているのかが分からない。

面識なんてないはずなのに、何か彼にあったのだろうか…...。

頭の中でクエスチョンマークを無数に浮かび上がらせていると、今度は私達の近くにいた女子二人までもが目を輝かせながら急に会話に入ってきた。

「相馬君の話だよね!?彼、なんかめっちゃ格好良くなったって噂だよ!」


……はい?

相馬君は元々格好いいですけど?


私は聞き捨てならないと反論したくなったけど、そこを何とか我慢して、素知らぬ様子で夏帆達の話に黙って耳を傾ける。

「眼鏡止めて、髪型も変わって凄い垢抜けたってA組の子が言ってたよ」

「一杉君転校しちゃって、うちの学年あんまりパッとする人いないから、新たな目の保養発見!って感じみたい」

私を置き去りにして会話がどんどんと盛り上がる中、私も相馬君がそんな風に変わったとは初耳だし、一刻も早く会いたい気持ちに内心そわそわしっぱなしだ。

「それじゃあさ、後でちょっと覗きに行ってみない?」

極めつけに、相変わらずの夏帆のミーハーっぷりが炸裂し、私は我慢の限界を迎えた。

「うん!昼休みになったら私も行く!!」

そして、つい力を込めて食い気味に賛同してしまい、ふと我に返った頃には時すでに遅し。

「……え?由香里そんなキャラだっけ?」

今までの私では想像もつかない反応に、夏帆達は口を空けたまま呆気にとられていた。

「……あ。えっと……いいでしょ。たまには」

なんて。どう言い訳すればいいのか分からず、慌てて体裁を整えてはみたものの、もはや開き直るしかなかった。


それから夏帆達に思いっきり弄られたけど、そこはもう自業自得だと。

いかに自分が相馬君の沼にハマっているのか、改めて実感せざるを得ない瞬間であったのだった。