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雲一つない青空の中、太陽が一番高い位置に昇っている頃、私はあまり派手ではない、ささやか花束を持って相馬君がいる一般病棟へと足を運ぶ。


「っあ、お姉ちゃんだー!また来てくれたんだねー!」

大部屋の窓際まで近付くと、私の姿に気付くや否や、凛ちゃんと華ちゃんがこちらに向かって笑顔で大きく手を振ってきてくれた。

「こんにちは」

私も再び相馬君の家族に出会す事が出来、嬉しくてつい頬が緩み、小さく手を振り返した。

「朝倉さん来てくれたんだ。またって……前にも来てくれてたの?」

凛ちゃんと華ちゃんに挟まれながら、相馬君は私の姿を見ると驚いたように目を丸くする。

「悠介がICUにいた時来てくれたの。あの時は朝倉さんの呼び掛けで、あなたに少しの反応があったのよ」

その隣で相馬君のお母さんは、彼に似たとても穏やかな笑顔で当時を振り返ってくれた。

「あそこではお兄ちゃん何日も眠ったままだから、本当に死んじゃうのかと思ったんだよ。凄く怖かったんだから……」

すると、華ちゃんは頬を膨らませながら、浮かない顔付きになり相馬君の腰元にギュッと抱きついた。  

そんな華ちゃんの表情に私の胸は締め付けられる。

「うん。起きるのがちょっと遅くなってごめんね。もう大丈夫だから」

抱きついてくる華ちゃんの頭を、相馬君は愛おしそうに優しく撫でてあげて、とても温かい笑顔を見せてきた。

「あ、ずるい!私もだよ!」

「はいはい。凛もごめんね」

その向かいに立っていた凛ちゃんも負けじと相馬君の腰元に抱きついて、頬を膨らませながら撫でてもらおうと頭を擦り付けてきた。


……相馬君、モテモテじゃん。

微笑ましい光景ではあるけど、こんなにも双子から愛されているとは。

流石と言うべきか、少しだけこの兄妹のやり取りに圧倒されてしまった私。


「相馬君元気そうだね。本当に良かった……」 

とりあえず、文化祭の時よりもかなり顔色が良くなっている為、私は心から安堵の溜息が漏れると同時に、涙腺までもが緩みだしそうになるのを何とか堪えた。

「朝倉さんも……色々ありがとう」

相馬君は少し間を空けて、その一言に沢山の意味を込めるようにゆっくりと応えた。