「君!ここで何をしてる!?いいからそこをどきなさい!!」

何やら扉の外が騒々しくなり、聞こえてきた複数人の教師達の声に目を見開くと、一杉君は私から勢い良く離れた。

そして、次の瞬間、鍵の外れた音と共に閉められた扉が思いっきり開かれ、そこから一気に光が差し込んでくる。

その明るさに目が眩み、私は思わず顔を顰めてしまったが、その視界からうっすらと捉えた教師達の隣に立つ見覚えのあるシルエット。

それが誰なのかはっきりと分かった時、私は気付けば勢い良くその場から立ち上がり、その人物の元へと駆け出していた。


「相馬君っ!!」

「朝倉さんっ!!」

その呼び掛けは、ほぼ同時だった。


私は目の前に立つ相馬君の胸板に思いっきり抱き付くと、相馬君もそれを受け止めるようにしっかりと抱き締めてくれた。

そこからほんのりと匂う消毒液の香。

紛れもなくちゃんと感じる相馬君の温もりと鼓動。

霊体じゃない、確かな生身の身体。


相馬君の意識が戻った喜びもそうだが、今ここに相馬君が存在している喜びの方が勝り、嬉しさのあまり私の涙腺は崩壊し、大粒の涙が滝のように流れ落ちる。

「……朝倉さん、ごめん。……ごめんね……」

腕の中で泣きじゃくる私を宥めるように頭を優しく撫でながら、相馬君の苦しそうな声が耳元で震えて聞こえる。

「一杉、こっちに来い!これはどういう事か説明して貰うぞ!あと、相馬もだ。情報提供はいいが、これはこれで問題だ!もう親御さんには連絡したからな!」

すると、会えた喜びも束の間。

教師達は険しい顔付きで一杉君の腕を引っ張ると同時に、相馬君の肩を掴んできて、私達は非情にも無理矢理引き剥がされてしまった。

一杉君はというと、未だに状況が飲み込めていないのか。何も言わずに呆然としたまま外で待機していた人と一緒に教師達に連れられて行った。

それから相馬君も黙って頷き、教師の後ろを大人しく付いて行ってしまい、私達はそれ以降会話をする機会が与えられないまま離れ離れとなってしまった。


「とりあえず、朝倉さんは保健室に来て」

そして、この場に取り残された私は女性教師に優しく声を掛けられると、地面に落ちていたハピネスベアーを拾い上げ、ゆっくりとこの場を後にしたのだった。