倉庫前だなんて……。

確かに、あそこは校舎から離れてるし、文化祭中であれば尚更人なんか近付きもしない。

そんな場所に呼び出すということは、やっぱり昨日の話の続きなのだろうか……。


私は悶々とする気持ちを抑えながら、呆然と立ち尽くしいると、突如誰かに肩を思いっきり掴まれ、体が大きく反応してしまった。

「ゆ、ゆ、由香里?い、い、今のなに?どういうこと?あの一杉君といつの間にそんな関係になったわけ!?」


……しまった。

後半から存在をすっかり忘れていた私は、一部終始を隣で聞いていて、私以上に動揺している夏帆に恐る恐る視線を向ける。

「……あ、うん。なんだろうね。私もよく分かんない」

誤魔化すつもりはなく、ただ本心を伝えたつもりだけど、当然ながら全然納得していない夏帆は、今までに見たことのない気迫で私に詰め寄ってきた。

「ずるいっ!!何で教えてくれなかったの!?それじゃあ、一杉君は由香里の為に瀬川さんと距離を置くっていうの!?しかも、呼び出しまで!?」

「ちょっと!声大きいから!」

流石にクラスの人達には聞かれたくないため、私は慌てて夏帆の口を両手で塞ぐ。

そして、このままでは収まりそうもないので、諦めた私は深い溜息を吐くと、昨日の出来事をポツリポツリと夏帆に話したのだった。



「……信じられない。まさか、あの時お姫様抱っこしていた一杉君の方が由香里に惚れたなんて……」

私の話を全て聞き終えると、大人しくなった夏帆は口が開いたまま唖然としている。

「私だって未だに信じられないよ。なんか、まだからかわれているような気がするし」

自分の顔に自信があるわけでもないし、人それぞれかもしれないけど、ただ寝顔を見ただけであそこまで言われるとは、私の中では中々考えづらい。

でも、昨日も今日も一杉君の顔は冗談を言ってるようには見えなかったし、これは素直に信じていいのだろうか……。

兎にも角にも、四時に一体どんな話をされるのか。私は釈然としないまま今日の文化祭を過ごすことになりそうで、何だか気が重くなっていく。