「……そう言う朝倉さんは、もしかして好きな人と回ったりするのかな?」

そんな硬直する私を他所に、一杉君は急に物悲しそうな表情へと変わると、まるで捨てられた子犬のような目で私を見てくる。

「いや、それは絶対に無理!!」

その目に若干心が揺らぐも、私は現実的不可能な状態に思わず必要以上に否定してしまった。

「……それじゃあ、俺の誘い受けて貰ってもいいかな?」

私の反応に一杉君の顔が一気に明るくなると、今度は、はにかむように笑って見せてきた。


……どうしよう。

断る理由が見つからない。

昨日の告白もあるし、気不味いから嫌だとも言い難い。

もしかしたら、その事でまた何か話があるのだろうか……。

だとしたら、益々会いたくないけど、このまま一杉君の気持ちを無下にするのもどうかと思う。


「……わ、分かった。四時ね」

私は短い間悩みに悩んだ結果、首を縦に振った。

「ありがとう。それじゃあ倉庫前辺りに来てくれると嬉しいな。ちょっと人目を避けたくて……。じゃあ、また後でね」

そう言うと、一杉君は爽やかな笑顔を残して、再び元居た場所へと戻っていったのだった。