「う〜ん……。そうだなあ……」

一杉君は暫く空を仰ぎながら、暫く勿体ぶるように間を開けてくる。

「俺、朝倉さんのこと気になってるから」

そして、否定し続けていた疑惑が確信へと変わる一言に、私はその場で固まってしまった。

「気にならなければ話しかけないし、ここまで追いかけない。君の泣いてる理由を知りたいなんて思わないから」

そう言うと、一杉君はいつになく真剣な目で私を見据えてくる。

今までこんな経験なんて皆無のため、頭は混乱していて上手く回らない。

一杉君の熱い視線が、不本意ながらも私の鼓動を刺激してきて、体が段々と熱くなってくる。


……。


………けど。


「一杉君には瀬川さんがいるじゃない。……それって浮気だよね?」

自分で言ってて凄く恥ずかしいし、おこがましいと思うけど、私は一杉君の言動が腑に落ちない。

瀬川さんの事は大嫌い。
でも、人を好きになる気持ちは痛い程分かる。

相馬君を犠牲にしてまで必死になってたくらいだから、きっと私よりも、もっと深い愛なんだと思う。

それなのに、一杉君は瀬川さんの不安通り、彼女のことをもう見ていない。しかも、その相手はまさかの自分。

その事実に直面した私は何とも言えない感情に苛まれ、体が震えてくる。


「うん。でも誰かを好きになる気持ちって止められないよね?勿論、二股するつもりはないから、君がよければ美菜とは別れる」

核心をついた筈なのに、一杉君は動揺することなく、私から視線を逸らさない。

逆に、ここまで言われてしまった私の方が動揺してしまい、一杉君を直視する事が出来なかった。