「う~ん。……どうやら、幽霊ではないかな」

すると、動揺する私とは裏腹に終始落ち着いた様子の男子生徒は、顎に手をあてると、少し考え込むように視線を足元へと落とした。

「僕自身もまだ状況が全然理解出来ていないんだけど、死んでないのは確かだと思う。何となくそう感じるんだ。言うなれば、幽体離脱的な感じなのかな?」

そう言いながら、静かに分析をする男子生徒。

私以上に今一番不可思議な現象が起きている立場のくせに、何故そんなにも冷静でいられるのか訳が分からない。

そもそも、私は霊感なんて全くない。
それ故、霊的存在なんて今まで一切信用していなかったのに、何故私はこの男子生徒の姿が見えているのだろう。

もしかして、頭を打ったことが原因なのだろうか。
そんなもんで、人の体質は変わってしまうものなのだろうか……。


もはや収拾がつかない状況に、私は軽い頭痛を覚える。

そんな中、暫く黙ったまま思考を巡らせていた男子生徒は、急にこちらの方へ振り返えると、突然私の片手を握ってきた。

「何はともあれ、僕の事が見えるのなら、もはや頼めるのは君しかいない」

そして、いつになく真剣な眼差しで私の目を見据えてくる。

その瞬間、私の肩は小さく跳ね上がった。

これまで男の人と接する機会があまりない私にとって、この男子生徒の言動は刺激が強い。

そんな内心焦っている私の心境なんて全く気付いていない様子の男子生徒は、キラリと瞳に小さな光を放ち、私にこう言う。

「これから、僕と一緒に探して欲しいものがあるんだ」