”キーンコーンカーンコーン”
朝一番に聞く鐘の音は、新たな期が始まることを意味している。
高校二年生になった僕は、そのチャイムが鳴り終わるまで机に突っ伏して目を瞑っていた。
早起きして、朝ご飯を夕星に作り、一緒に準備支度をする。先に夕星を学校に行かせてから、自分のペースで家を出た。
やっぱり初日は体が重いなぁ……寝不足気味だし。
「航大! 二年生も同じクラスで良かったよ!」
先生が来るまでの間の時間に、仲の良い周馬が話かけてきた。
周馬は一年生の時も同じクラスで、二年連続でクラスメイトになった。
「よろしくな、周馬」
「もち! それより知ってるか? このクラスに転校生が来るらしいぞ!」
「転校生?」
ドライヤーで乾かしただけのボサボサヘアーで、前髪は目にかかっている。
生まれつき地毛が茶色い周馬は、全体的に色素が薄めだ。
ひょろっとしているため、他のクラスメイトからは『ごぼう』と呼ばれている。
「転校生? 編入生? よくわかんないけど、けっこうヤバいやつが来るらしいぞ」
「どこからそんな情報入手したんだよ」
「ま、裏ルートってやつ?」
どうせ他校の友達から聞いたんだろ。
心の中でつっこむけど、声には出さなかった。
”ガラガラ”
「ほらー、席に着けよー」
聞き馴染みのある渋い声。一年生の時と同じ担任の先生だ。
何か、新学期になった実感が湧かないクラスだな。
「おーい、入っていいぞー」
ドアは開いている。
廊下に待機していた男の生徒が、先生の渋い声の後にのそのそと教室に入ってくる。
見た目はどっからどう見ても……不良だ。
「えーと……隣町の高校から編入してきた叶 雷人君だ。みんな仲良くしてやってくれ」
雷人君か……。
先生の紹介の後に、軽く会釈する。目つきが鋭い。みんなを睨んでいるようだった。
肩幅が広く背も高い。ハリネズミのようなツンツンとした髪型も相まって、クラスの全員が委縮してしまうほど厳つい。
雷人君の左手首には、黄色と黒の配色という、警告色をしているミサンガがつけられている。
あのミサンガって……隣町の不良集団『ホーネッツ』の証だったような……。
街の噂とかよく知らないけど、狭い地域だからそれくらいの情報は僕にも入っている。
窓際角の一番人気席。そこにどっしりと腰深くかけた。
風格漂う雷人君に、クラスのみんなは戦々恐々としている。
……きっとみんなも気づいているはずだ。
雷人君の刺々しい顔つきのその奥には、少しの儚さが孕んでいたことを……。
「あの……雷人ってやつ、すごい威圧感だったな」
授業が終わってからの休み時間、早速周馬が僕の席に来て話す。
周りに雷人君がいないか、何回も確認しながら話してくる。
「ああ。どうしてウチの学校に編入してきたんだろうな」
「……聞いたところによると、雷人は将来有望なサッカー少年だったらしいよ。でもケガしちゃったみたいで」
「サッカーをやめて……進学校のウチに来たのか……」
「ああ見えて、かなり頭が良いらしいぞ」
す、すごいな……。
サッカーも上手くて、頭も良いのか。
不良なのに頭が良いなんて、反則じゃないか?
じゃあサッカーがダメになって、スポーツ特進から外れて、ウチの学校に……みたいな流れかな。
「ま、とにかく関わらないことだな。もし何かの因縁とかつけられたら、たまったもんじゃないからな。気をつけろよ航大」
「周馬こそ、調子に乗ってダル絡みするなよ」
「わかってるってー」
世の中には、色んな人がいるんだな……。
雷人君……計り知れないものを抱えてそうな人だ。
ケガでサッカーの道を断念か。そりゃグレたくもなるよなぁ。
さてさて、帰って洗濯して、夕星の宿題を手伝ってあげないと。
今日のご飯は何にしようかなー。
夕星の大好きな生姜焼きでも作ってあげるか。みそ汁はネギとしめじの味噌汁にしよっと。
朝一番に聞く鐘の音は、新たな期が始まることを意味している。
高校二年生になった僕は、そのチャイムが鳴り終わるまで机に突っ伏して目を瞑っていた。
早起きして、朝ご飯を夕星に作り、一緒に準備支度をする。先に夕星を学校に行かせてから、自分のペースで家を出た。
やっぱり初日は体が重いなぁ……寝不足気味だし。
「航大! 二年生も同じクラスで良かったよ!」
先生が来るまでの間の時間に、仲の良い周馬が話かけてきた。
周馬は一年生の時も同じクラスで、二年連続でクラスメイトになった。
「よろしくな、周馬」
「もち! それより知ってるか? このクラスに転校生が来るらしいぞ!」
「転校生?」
ドライヤーで乾かしただけのボサボサヘアーで、前髪は目にかかっている。
生まれつき地毛が茶色い周馬は、全体的に色素が薄めだ。
ひょろっとしているため、他のクラスメイトからは『ごぼう』と呼ばれている。
「転校生? 編入生? よくわかんないけど、けっこうヤバいやつが来るらしいぞ」
「どこからそんな情報入手したんだよ」
「ま、裏ルートってやつ?」
どうせ他校の友達から聞いたんだろ。
心の中でつっこむけど、声には出さなかった。
”ガラガラ”
「ほらー、席に着けよー」
聞き馴染みのある渋い声。一年生の時と同じ担任の先生だ。
何か、新学期になった実感が湧かないクラスだな。
「おーい、入っていいぞー」
ドアは開いている。
廊下に待機していた男の生徒が、先生の渋い声の後にのそのそと教室に入ってくる。
見た目はどっからどう見ても……不良だ。
「えーと……隣町の高校から編入してきた叶 雷人君だ。みんな仲良くしてやってくれ」
雷人君か……。
先生の紹介の後に、軽く会釈する。目つきが鋭い。みんなを睨んでいるようだった。
肩幅が広く背も高い。ハリネズミのようなツンツンとした髪型も相まって、クラスの全員が委縮してしまうほど厳つい。
雷人君の左手首には、黄色と黒の配色という、警告色をしているミサンガがつけられている。
あのミサンガって……隣町の不良集団『ホーネッツ』の証だったような……。
街の噂とかよく知らないけど、狭い地域だからそれくらいの情報は僕にも入っている。
窓際角の一番人気席。そこにどっしりと腰深くかけた。
風格漂う雷人君に、クラスのみんなは戦々恐々としている。
……きっとみんなも気づいているはずだ。
雷人君の刺々しい顔つきのその奥には、少しの儚さが孕んでいたことを……。
「あの……雷人ってやつ、すごい威圧感だったな」
授業が終わってからの休み時間、早速周馬が僕の席に来て話す。
周りに雷人君がいないか、何回も確認しながら話してくる。
「ああ。どうしてウチの学校に編入してきたんだろうな」
「……聞いたところによると、雷人は将来有望なサッカー少年だったらしいよ。でもケガしちゃったみたいで」
「サッカーをやめて……進学校のウチに来たのか……」
「ああ見えて、かなり頭が良いらしいぞ」
す、すごいな……。
サッカーも上手くて、頭も良いのか。
不良なのに頭が良いなんて、反則じゃないか?
じゃあサッカーがダメになって、スポーツ特進から外れて、ウチの学校に……みたいな流れかな。
「ま、とにかく関わらないことだな。もし何かの因縁とかつけられたら、たまったもんじゃないからな。気をつけろよ航大」
「周馬こそ、調子に乗ってダル絡みするなよ」
「わかってるってー」
世の中には、色んな人がいるんだな……。
雷人君……計り知れないものを抱えてそうな人だ。
ケガでサッカーの道を断念か。そりゃグレたくもなるよなぁ。
さてさて、帰って洗濯して、夕星の宿題を手伝ってあげないと。
今日のご飯は何にしようかなー。
夕星の大好きな生姜焼きでも作ってあげるか。みそ汁はネギとしめじの味噌汁にしよっと。