「やっぱり、スイじゃん! 俺のことよく分かったな」
 中1の春、髪をド派手な赤に染めた。スイも雰囲気が変わったが、俺は見た目が変わりすぎている。
「分かるよ、当たり前じゃん」
「さすが! そうだ、今からゲーセン行こうぜ。友達にスイのこと紹介したいしさ。今、西小とか東小出身の奴と仲いいんだよ」
「始業式の後でもいい? たぶん色々手続きしないといけなくて、学校抜け出したのバレたらお母さんに連絡行きそうだし」
 スイは困り顔で答えた。さすがに転校初日からサボらせるのは問題があるか。
「それならしゃーない。一応始業式行くか」
 スイを体育館まで案内する。この5年間であったことを話しながらゆっくり廊下を歩く。
 すると騒ぎながら走っていた3年生が後ろからスイにぶつかってきた。スイは音を立てて倒れこんだ。
「いってえな! ちんたら歩いてんじゃねえよ! 謝れよこのグズ!」
 ぶつかってきた先輩が肘をおさえながら怒鳴り散らした。
「ごめんなさい! 本当にごめんなさい……」
 スイは土下座する勢いで謝りだした。スイが怯えている。スイが怖がっている。
 ふざけるな。お前からぶつかって来たんだろ。俺の親友を傷つける奴は許さない。
「てめえが謝れよクソが!」
 とりあえず理不尽な先輩の顔を思いっきりぶん殴ってやった。一緒にいたもう1人に肩を掴まれて反撃されそうになる。正当防衛でみぞおちに1発パンチをお見舞いした。
「失せろ」
 俺が舌打ちすると、殴られた箇所を押さえながら2人ともそそくさと逃げて行った。
「大丈夫か?」
 スイの様子は明らかにおかしかった。尋常じゃないくらい震えて汗をかいていた。呼吸も正常じゃない。先輩の肘が変な位置に入ったのか、転んでどこかを強打したのか。スイを保健室に連れて行った。