風景は急にガラリと様変わりする。金木犀の香りは遠ざかり、代わりに出迎えてくれたのは夏の花だった。
色褪せた道の端に、夏椿とよく似た小さな花――ヒメシャラが咲いている。それをたどっていくとたどり着いたのは、花々に守られるようにして佇む昏い青色の鳥居だった。
一歩、足を踏み入れる。
そしてある事に気がついた。先導してくれた蝶が、何処にもいないことに。月伽が不思議に思い辺りを見渡す。
すると、鳥居の奥から少女が姿を現し深々と頭を下げる。
「お待ち申し上げておりました、月伽様。蝶池までご案内します」
「まだ、名乗ってませんよ?」
「主から丁寧にもてなすよう、先にお言葉を戴いております」
「主――その方が、願いを叶えてくれるのですね。ようやく死の夢が見られるのでしょうか」
「……こちらへどうぞ」
夜に咲く風が心地いい。天を舞いたくなる気持ちを抑え、月伽の死への想いを聴きながら主の待つ場所へと向かう。
色褪せた道の端に、夏椿とよく似た小さな花――ヒメシャラが咲いている。それをたどっていくとたどり着いたのは、花々に守られるようにして佇む昏い青色の鳥居だった。
一歩、足を踏み入れる。
そしてある事に気がついた。先導してくれた蝶が、何処にもいないことに。月伽が不思議に思い辺りを見渡す。
すると、鳥居の奥から少女が姿を現し深々と頭を下げる。
「お待ち申し上げておりました、月伽様。蝶池までご案内します」
「まだ、名乗ってませんよ?」
「主から丁寧にもてなすよう、先にお言葉を戴いております」
「主――その方が、願いを叶えてくれるのですね。ようやく死の夢が見られるのでしょうか」
「……こちらへどうぞ」
夜に咲く風が心地いい。天を舞いたくなる気持ちを抑え、月伽の死への想いを聴きながら主の待つ場所へと向かう。