目が覚めた月伽はひとつ欠伸をし、それからサービスで配られた金木犀の紅茶をゆっくりと味わう。秋限定のサービスだそうで、その他にも金木犀の飴玉をふたつくれた。


 トンネルを抜けた電車は、深く昏い空の下を走っている。そして車内に流れるアナウンスが、まもなく到着する事を告げる。


「――いよいよなのね」


 月伽は飲み終えた紙カップを置き、金木犀の飴玉をしまう。後々役に立つアイテムになるかもしれない、今希石先輩のRPGゲームの語りが役立つとは。


「さすが先輩ですね」


 もう始まりを告げている、夜という舞台が。


 ――そう、これはきっと、すてきな夢の始まりなのだ。


 月伽はまた瞳を閉じ、瞼(まぶた)に幻想を描く。
 



 もうすぐ、だ。