「いよいよ、始まるんだね……」
真昼たち新入生は、キャンパス内の射撃訓練場に集められていた。
彼女たちの眼前に居並ぶのは横浜衛士訓練校の二、三年生たち。 いずれも、大なり小なり 実戦経験を持つ本物の衛士ばかりである。
「午前中の授業において、 戦術機操作の基本は学んでくれたわよね? 午後からは、実物に触れての射撃訓練を行ってもらいます。ただし、戦術機はデストロイヤーのみならず、人命すらも奪いうる強力な兵器です」
上級生の指示なく引き金に触れないように、と新入生に注意を呼びかける。そんな様子を見て、風間は真昼の横でつぶやく。
「聖王学院中部時代から実戦を経験しているわたくしには関係ありませんけど」
「あら、言うじゃない、風間さん」
「ひえっ」
一発で言い当てられて、さしもの風間も慌てた声をあげる。 傍から聞いていた真昼も驚いた。
まさかこの担任は、授業一日目にして、もう生徒たちの声までも覚えているというのか。
「まあ、たしかに、首席合格者のあなたには、私たちの授業なんて釈迦に説法かもしれないわね」
目を細め、鋭い目つきでを見る担任教師。だが、担任教師はフッと微笑すると、ひらひらと手を振った。
「そんなに緊張しないで、風間さん。 あなたのその自信、頼りにしてるわよ? 強い子がいれば、それだけ周りの子も助かるでしょうしね」
「……え? あ、はい。そ、そうですわね。みなさんのお役に立てるよう、微力ながら健闘いたします」
あまり怒っていない様子の担任教師を見て、安堵の表情を浮かべる。
「まあ、それはそれとして、私語の罰よ。グラウンドを五用してきてね」
「……はい」
「さて。静かになったところで、班分けを行います。 ここには、あなたたち新入生のほぼ倍にあたる人数の上級生に集まってもらいました。上級生二人につき、新入生一人の班です。では、それぞれ担当の子についてあげて」
担任教師が後ろに下がると、代わって、三年生の一人が前に進み出る。
「では、これより、班分けの発表をいたします」
「わわっ………あの方、ブリュンヒルデです!」
皆の前に堂々と立つ三年生を見ながら、小声ながらも興奮した様子で呟く衛士が居た。
それは真昼の知識にも覚えがあった。
横浜衛士訓練校は伝統的に、三人の生徒会長によって統治されている。そして、会長職についた生徒は、生徒から畏怖と敬意を込めて称号で呼ばれている。
校内の風紀と秩序を守るジークリンデ。
政治的な判断や事務を統括するオルトリデ。
部隊と衛士を率いる総司令官戦闘スペシャリストであるブリュンヒルデ。
上級生たちは大きな掲示板を立て、班分けの組み合わせを発表した。
「班の組み合わせについては、こちらに掲示してあります。各自確認してごとに訓練を開始してください」
「どんな先輩と一緒になるのかな。優しい人だといいけど」
「まったく、こんな掲示の仕方、時間の無駄ですわ。 連絡用の端末があるのですから、事前に送信しておいてくださればいいですのに」
「あっ、風間さん。もうグラウンド五周終わったの?」
「ええ、楽勝ですわ」
そう言ってウインクする風間は、息ひとつ乱してはいない。さすがは首席合格者の余裕である。
「あえて張り紙で掲示するのも、横浜衛士訓練校の伝統……らしいよ」
「あら、真昼さんは意外と横浜衛士訓練校の校風というか伝統を知っているんですの?」
「穴だらけのでこぼこ知識だけど、出来る限りは調べたよ」
真昼たちが話している間に、他の生徒たちは自らの班を確認し、それぞれの担当上級生のもとへと歩いていく。
「私は……」
大きな掲示板に目を走らせ、自らの名前を探す。
「……………あっ」
掲示板の中に自分の名前を見つけた真昼は目を見開いた。
「わたし、わたしの班………!」
「………そこの新入生さん。すみやかに合流してください」
「はいっ! すみませんっ!」
ブリュンヒルデから直々の注意を受け、ぺこりと頭を下げる真昼。だが、その間も溢れる笑顔を抑えきれない。
(すごいすごい! わたしって、けっこう強運の持ち主かも!?)
夢ではなかろうかと思いつつ、念のため掲示板を見直す。だが、やはり間違いはない。
真昼にとって人生初の戦闘訓練。その指導担当上級生の欄には、「夕立時雨・柊シノア」のが、はっきりと記されていた、