昼下がり、私は茶と茶菓子を持っていつもの場所にいた。

 誰にもバレていない、秘密基地。

 ここには私のお友達がいる。

 カサカサと足元を這っている百足。

 ヒラヒラと舞い肩に留まる揚羽蝶。

 木から糸を垂らしてくる蜘蛛。

 皆私の話を聞いてくれる友達だ。

「何があったみたいね、聞くわよ。」
「アン〜…!またお見合いですって!私、魂から辛くて辛くて仕方ないのよ。」

「それは大変だな、貴蝶姫さまよ。」
「むっ、クオンったら呑気ねぇ……っ痛っ!」

 ビリッと電気が走るような痣の痛みが顔を覆った。

 心做しか足音も聞こえる。

「まだ、痛むのか?」
「み、たい…っ…!」

 いつもならすぐに痛みが引くのだが、そうではない。

 痛みも足音も腹から湧き出る声さえも噛み砕いて喰らった。

 それでも悶え、途切れ途切れの声が漏れる。

 足音に対するイライラも募るばかりだ。

「っ…!っはぁはぁ、うっ…!あぁっ…!」

 ズキズキ、左の顔を押さえる。

 ズキ、耐えられずに前屈みになった。もうダメだ…

「うっ…!うわぁぁぁぁっ!ううっ!あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"っ!」
「「「姫っ…!」」」

 こんなに大きな声を出してしまえば、バレてしまうと分かっているのに。

 声が止まらない。

「姫…?っ!どうかなさいましたか?」
「あ"あ"あ"あ"あ"あ"っ!ううっ!っ!あ"あ"あ"っ!っはぁ、っはぁ…」

 息も絶え絶えの私の背を誰かが摩ってくれた。

 暖かい、男性の安心感のある声が痛みを和らげた。だんだん眠く…