未明の頃に……

「今、名前はなんて言うの?」
「僕は、実は咲人って言うんです。奇跡ですよね。外れの林檎農園で生まれて、今は王直下騎士団の副団長をやってます。」

 初対面の彼に心を許してしまうのはなぜ?

 それは彼が咲人の生まれ変わりだという証明だった。

 雰囲気も声もそう変わりないから…

「咲人……ふふふ、やっぱりその名前が1番ね。いい貴方にぴったりじゃないの。」
「御心感謝申します。」
「……それでいて、何用かしら?」

 彼がこんな時間に来るには、理由があるはずだ。

 ある程度予想はついているが、敢えて聞いてみた。

「ふふ、僕がここに来る理由なんて、ひとつしかありませんよ?」

 わかってるのでは?と言う林祢の姿は、咲人と重なった。

 さあ、と言ってはぐらかしておこう。

 彼が歩みを進める。

「ふっ。貴女を奪いに来たんです。」

 前で跪けば、手を取り甲に軽くキスをする。

 この言葉はもう二回目。

 何回奪われれば済むのか…

「私…ずっと待ってたの…」
「はい…」
「もう…1人にしないで…」

 本音を吐露する。

 子供がいようと、どこか心の中は空っぽで、それは2人が成長する度大きくなっていった。

 2人は咲人との子、どこか彼に似ているのだ。

 2人で視るはずの未来を独りで視るのはもう懲り懲りだ。