未明の頃に……

 ある日、ズキッの頭が痛んだ。

 来た。

 どんなに醜くく果ててようとここに居続けたのには理由がある。

 たとえこの城が反抗の花園になろうと、高潔な孤城に1人になろうと…彼の帰りを待つために。

「少し…出てくるわ。」
「行ってらっしゃいませ、母上。」

 藤棚に向かって走る。

 早く会いたくて。

 見えなくても分かるのだ。

 彼の、あの立浪草の、魂の香りが。

 月光が1時を指した。

 青年が立っている。

 足音に気づいて振り返ると、私は足を止めた。

「随分時間がかかってしまいましたね。ただいま帰りましたよ、蝶花姫様。」
「…っ…えぇ。おかえりなさい、咲人様…!」

 寂しかったのか?

 苦しかったのか?

 考えるほど涙が流れた。