『貴方はどなた様?』
『!!!俺は…百足の悪魔だ。殿下妃が俺に何用でしょうか。』
『名前は?』
『申し訳ありません…』
『そうなのね…じゃあ、「ムウ」って呼ぶわ!!』

 当時幾つだったか、まだ無邪気な感じが残っていて。

 とても大人しく明るい姫だった。

 噂よりも美しく可憐で、目が離せなかったのを覚えている。

 あぁ…蝶蘭様。

 俺は、仇を打てただろうか。

 町の皆よ…俺は、罪を償えただろうか…?

『うん…!悪魔さん、もう大丈夫だよ!』

 あ、あぁ…

 子達の声が聞こえる…

 済まない、済まない…

 俺のせいで、死なせてしまって…!

『謝らないで、悪魔さん。』
『俺たち別に悪魔さんのこと恨んでないよ。』
『普通に林檎、美味しかったしね!』

 塵になっていく身から涙がこぼれた。

『ムウ…お疲れ様でした。もういいよ。おいで…?一緒に幸せになりましょう?』

 蝶蘭…様…、あぁ。

「今、逝くさ…」

 言いたいことがたくさんあるのだ。

 もう、いい。

 蝶蘭が伸ばした手を取る。

 藤の花 君恋い慕う 永遠に継ぐ

 これが最初に言いたい言葉だ。

 俺は、眷属の糸を切った。