俺は自分の持つ魔力を全て解放した。

 相打ちでも構わない。

 とにかくこいつを殺せるならそれも本望だ。

「死ね!」
「っ!そんなに頑張っちゃって大丈夫そ?もうおじいちゃんなんだから無理はダメだよ!」

 相手も魔力を全解放。

 持久戦になった。

 負の感情は魔力を増幅させる。

 がしかし、コントロールがつかなければ暴走する。

 増幅された魔力同士がぶつかり合ったらどうなる?

 簡単だ、反発し合う力が強くなる。

 互いの剣は耐えられず跡形もなく粉々、飛び散る破片が身に刺さると、とてつもない痛みを感じた。

 少しして、片膝を着く。

「何よ…ボロボロじゃない…」
「そっちこそ…っ…!」

時間の無さを身をもって感じた。

「もう終わりにするわ…!」
「それはこっちのセリフだ!」

 姫、最後までそばにいれなくてすまない。

 俺を許してくれ。

 残り少ない魔力を右腕に纏う。

 ミアの拳より先に、俺の拳が心臓へ直撃。

 貫通した。

「俺の勝ちだ…」
「なっ…」

 抜くと同時にミアは血を吐いて身を崩した。

 悪魔は死ぬとその身は塵となり消える。

 残るのは衣服類のみだ。

「ハ、ハハッ…!」

 さすがミアと言うべきか、腹は硬く黒ずんできた。

 未明蝶の毒だ。

 死に際に刺したのだろう。

 大きくゆっくり呼吸する。

 立つ力すら残っていない。

 そういえば、もうめちゃくちゃになってしまったが、ここの部屋は蝶蘭のお気に入りの書庫ではないか。

「蝶蘭…様…」