怖いのだ。彼の居ない生活をするかもしれない、そう思うだけで狂いそうな程の恐怖に襲われる。

「いや…行かないで…」
「…蝶花姫、僕は必ず戻ってくると約束します。このペンダントを持っていてください。僕の宝物なんです。取りに戻りますから、それまで待っててください。」

 手渡されたペンダントは私が咲人にプレゼントした物だった。

 私も片方の耳飾りを咲人につけた。

「絶対返しに来て…じゃないと来世まで呪うわ…」
「ふふ、はい。」

 そっと涙を拭うと、そのまま触れるだけのキスを落とした。

「愛しています、蝶花姫。」
「私もよ、咲人様。……お気を付けて…!」

 結界を出ると、彼は見えないはずの私にお辞儀した。

 また一筋涙が流れた。

 私だって魔法使い、戦えるのに。と逃げてるだけの自分が嫌になった。

 父は無事だろうか、ムウは無事だろうか。

 不安で怖くて仕方ないのだ。

 どうか皆無事でいてくれ、とひたすら願った。