まさかミアが来るとなんて思っていなかった。

 ほんとに私を狙っているようだった。

 そして、彼女の中には母は生きている。

 地下を抜け出してから暫く走ると、木々の香りがした。

 森の中なのだと、すぐに気づいた。

「ここです、ハァハァ…」

 立ち止まったところにはほのかな林檎の甘い香りがあった。

 誰も居ないから、シーンと響く彼の声。

「ここにいても、いつかはバレるだろう…」
「なら、あたしが結界を張ってあげるわ!」

 アンの得意な魔法だった。

 目に見えないバリアで外から姿は見えないし、攻撃も当たらない。

「なら…僕は加勢に行きます。」
「…!何を言ってるの、咲人様!?」
「こちらの軍が来るまでまだ時間がかかります。ムウも戦ってるのに、僕だけ見てるだけなんてできません。」

 それなら俺も行く、とクオンが言った。

 アンは私とここで待機。

 咲人は覚悟の上で言ってるのが声色で分かる。

「そんな…やめて…!行かないで…!咲人様…!!」
「蝶花姫…僕は大丈夫です。」
「行かないで…私と一緒にいて…」

 腕を掴み、引き止める言葉を吐く。