「あ、そうそう。一つ言おうと思ったことがあったのよ。」
「…えっ?」
「貴方、いつまで人形でいるの?貴方はニンゲンよ。変わりなさい。欲望の儘に動く醜い生き物にね。」

 王子様、そう言い残すと洋扇をパチンと閉じ、蝶の群れと共に姿を消した。

 彼女は僕の正体を知っていた。

 知っていながらあの堂々とした態度。

 中々肝の据わっている少女だった。

 そして僕はその少女に心を持ってかれてしまった。

 これが恋なのだと確信した。

 帰ってから父にすぐそれを報告、あの少女が、藤城の一人娘だということがわかった。