それからというもの少しずつ2人の距離は近くなっていった。

 前のような壁は感じられない。

 彼女の表情も以前より明るく柔らかくなったように見える。

 好き、という甘い言葉を吐いても嫌な顔一つしない。

 寧ろ小さく笑って「私もです」とも言ってくれるほどになった。

 ただ、未だ信頼がないのか、顔の左は隠されたままだ。

 まぁ無理に距離を詰めるのも良くない。少しずつでいいから。

「ねぇ咲人様…?」
「はい、なんでしょう?」
「貴方はなぜ私のところに?前も聞いたけど……もう何度も断ってるわ。諦めなかったのはなぜ?」

 彼からの結婚の申し込みは何度も何度も来ていた。

 それを私は無下にも断っていたのだ。

 それもう呆れるほどに。

「そうですね…それだけ姫が好きだった。それだけですよ?」
「ほんとかしら。それにしては固執してない?」

 疑ってる訳では無い、ほんとうに気になるだけなのだ。

 私は見えない瞳で視たい。

 彼の心を。

「…そこまで言われてしまうと、なんだか申し訳なくなりますね。…実は僕達従兄妹なんですよ。国王と貴女の母は異母兄妹ですから。」

 異母…兄妹、そんなの初耳だった。

「従兄妹だからなんです?理由にならないわ。」
「ふふ、それもそうてすね。…あれは確か僕が15の時です。」