「そんな………そのミアっていう奴はどうなったんです?!」
「殺そうとしたが、逃げられてしまった。」

 罪悪感も背徳感も、ない。

 残酷なまでにズタズタにしたのはまだ記憶に新しい。

 それだけ、ウザったらしくて、悔しくて仕方なかった。

 それでも最後の最後で逃げられてしまった。

「あの時…俺がついていれば…彼女は……!」
「……」
「でも…あいつはまだ…どこかで平然と生きている…それが嫌で悔しくて…堪らない…!蝶蘭様のためにも…俺が殺さなくては…!」

 言葉にならない憎悪が腹の底からふつふつと湧いてくる。

 感情的になったムウは熱の入った言霊に息を切らした。

 すまない、と謝る。
「貴様が知りたいことは、言ったはずだ。」
「あ…ありがとうございます。しかし、辛い記憶を…申し訳ありません。」
「構わない…」

 ーー藤の花 君恋い慕う 永遠に継ぐーー

 藤城公爵家の結婚の誓いの言葉だそう。

「いつか姫に言えるといいな、咲人様。」
「っ!あぁ、いつかこの愛しい歌を奏でてみせよう。」