「っ!?…貴方はだぁれ?」

 彼女から声をかけてくださった。

 それが出会いだった。

 その姿はまさに蝶蘭に瓜二つだった。

 その時の俺は蝶蘭の眷属をしていたが、何かあれば彼女をも守ろうと誓った。

 ただそれはすぐ壊れることになってしまった。

 歳13の時、彼女は1人でここに来ていた。

 虫好きは変わらないから、いつでも外に出たがった。

 そんな時、ある悪魔に出会ってしまった。

「ある悪魔…?」
「あぁ、そいつの名はミア、未明蝶の化虫だった。そいつも蝶蘭妃の眷属だった。」
「未明蝶…」

 初耳の不思議そうな顔をしている。それもそうだ。

 未明蝶はこの丘の隅にしか生息していないから。

 ただ、俺たち化虫にとってミアは誰もが知る存在だった。

「未明蝶は特殊な毒を持つ蝶だ。」

 特にミアは美人嫌いで有名だった。

 自分の主が1番美しい。

 そんな彼女は姫が大嫌いだったのだ。

 主の娘と知らず。

 彼女は自身の蝶としての珍しさに姫を惹き、持ち前の毒で仕留めた。

 未明蝶の毒は死ぬほどではないものの、激しい痛みを伴い、患部が黒ずみ硬く花形に変形してしまうものだ。

 刺された左顔は言葉の通りになってしまった。

 伴い瞳は潰され見えなくなっていった。

 それを知った蝶蘭は自責の念にかられ、自ら命を絶ってしまった。