またも歩いて、着いたのは小さな丘。

 屋敷の下の街が一望できる、そんな場所だ。

「いい場所だろ?」
「…はい。」

 差す日差しは柔らかく、程よく吹く風が心地よい。気持ちいい…

「町の子たちとよく、来たんだ。近くに皆の墓もある。」

 ここで話すのが1番だ、とムウは言った。原っぱに腰を下ろすと、口を開いた。
「ここは俺が初めて姫に会った場所だ。」
と。

 俺は墓参りに来ていた。

 春になる頃、市で買った花を添えて帰る時だ。

 原っぱに座り込み話をしている少女が二人いた。

 1人はアン、揚羽蝶の化虫、俺の後輩にあたる眷属だ。

 その隣に姫がいた。

 歳は5つ、藤色の瞳が綺麗な少女だった。