ついてくるよう言われ、儘に行くと屋敷の庭の端、森に着いた。

 ムウはずんずん入っていく、迷いなく深く深くに。

「ここなら話すのに最適だな。」
「ここは...?」

 神秘的な場所だった。

 見た目は普通の森なのだが、開けた場所の中央には1つ大きな木が立っていた。

 近くには濁りひとつない川が流れていて、まさに森というシーンとした音が聞こえた。

 誰にも邪魔されない、そう言い切れるだろう。彼は大木の幹を叩いた。

「これは、俺が植えた林檎の木だ。」
「!!!冗談だろう?!」
「何一つと、嘘なんて、言ってない。かれこれ600年くらい前か。」

 彼がこんなに長寿だったなんて。思ってもみなかった。

「それじゃ、ムウは姫に作られたんじゃないのか?!」
「何を勘違いしてる。俺は百足の化虫、つまり悪魔だ。そして、毒林檎を配った犯人だ。」
「!!!?」

 目の前にいるやつが、町1つを死に追いやった殺人鬼。

 背中がゾワゾワする。

 悪寒が止まらない。

 あの未解決事件の、あの歴史に残るような大事件の、犯人が目の前に…

「まあ、そんなに怖がらないでくれ。顔が青い、座れ。」
「それは、顔も青くなりますよ…」
「…っ…そうだな……俺は別に人を殺したかった訳じゃない…まずそこから話そう…」

 どうやら話は長くなりそうだ。