ある日の朝食後のことだ。あることを聞いてみた。


「気になってることが。」
「なにかしら?」
「何故、結婚を拒むのです?」

 これは僕が怖がってるだけ。

 もし、ここを追い出されたら、後が無いのがこのギャンブルだから。

 それでもいいと、ここにいるのだけど。

「......私は道を外れたの。こんな姿で相手を幸せにできる自信が無いのよ。貴方こそ何故ここに?何度も婚約を断っているはずよ。」
「何故、と言われると悩みますね。何故で、しょう…」

 痛いことを突かれてしまった。

 変われと言われた日から僕は何も変わっていないようだ。

 そして今も変われそうにない。

「嘘つきね、言いたくないならいいけど。」

 そう言い残すと瞬く間にいなくなっていた。

 嘘つき、か。

 そんなこと自分が1番わかっている。

 僕は偽りで塗り固めた人形だから。