「...様、...人様!咲人様!ねぇ、」
「!!すみません、姫。どうかしましたか?」
「その...何かお持ちしようかと...///」
「///!お気遣い感謝します。ですが、大丈夫ですよ?僕は...林檎が好きなので。」
「...!!」

 この国で林檎を食べることは禁忌とされている。

 何も昔住んでいた殺人鬼が毒林檎を町中に配り殺した、なんていう逸話が残っているからだ。

 まぁそんなことも知らずに僕は1口食べたことがある。

 それが最初で最後だったな。その林檎が忘れられないのだ。

「それは...」
「仕方ないのことですよ。禁忌は禁忌ですから。僕は死んでもこの国の一員だ。それは変わらない、抜けたって同じです。ましてや貴女に申すなど今の僕に権利はありません。」
「随分弱気ね。気に入らないわ。」
「これが僕なので、ふふ。」

 無論、貴女とまともに喧嘩できる程の度胸もなかった。

 どうせ誰も僕を求めてはくれない。

 そう思うだけで胸がズキズキ痛んだ。

 この胸の痛みはあの日と同じ。