「蝶花...ちっとも上手に生きてあげられなくて…ごめんね...こんな私を許して...」

 彼女が小さく呟く。

「何を言うんです、姫様。」
「あっ…これは、母が最期に言った言葉なんです。それを…忘れたくなくて…」

 それでもここに来たのは、この儚い少女に恋してしまったから。

 しかし、この国で王室からの婿入りは禁止されている。

 そのために王室を離脱したのだ。

 一種の賭け事、このようなことは好まない性格なのだがな。

 彼女とは1度だけ会ったことがあった。

 それもほんの数分だけ。

 なんで好きになったかなんて分からないが、その一瞬で一目惚れというものをしてしまったのだ。

 僕もニンゲンなのだと自覚した日だった。