この国の支配者「王」、その2番目の子息で在られる咲人(さきと)様。

 最近、王室離脱を表明したが、まさかここに居るとは。

 ここは庭ではなく自室だ。

 ということは、彼がここまで運んでくれたことになる。

 なんと恥ずかしいことを…

「起きていて大丈夫ですか?随分痛みに苦しんでいたようですが。」
「これは、いつもなのです。ご迷惑おかけしました。」

 脳裏にノイズがかかる。

 靄みたいにかかって虚ろな気分になる。

「今日はどのようなご用件で?」
「?!ふふふっ、」

 手を口に当て小さく捨てるような笑いを浮かべた。

 ベットの横に立つと腰を屈めた。

「貴女を奪いに来たんです、蝶花姫。」

 髪にキスをされた。

 何を言えばいいか分からない。頬が熱に包まれた。
「もう、離しはしない。1人でいい、なんて云わせない。」

 初めて男の人を振り払えなかった。

 髪を持つ手は頬を伝い唇を親指でなぞった。

 反射的に身体が強ばる。

「!?大丈夫ですよ、何もしませんから。顔触ります?」