200年もこの名前を使っている。

 いつか彼に会えるその日までずっと使うのだ。

 貴蝶(きちょう)妃と呼ばれるのも慣れたものだ。

 本名なんて彼しか呼んでくれなかったな。

 高潔な家とされる藤城(ふじしろ)公爵家の一人娘 。

 1人でこの気高い城にいるのも恐ろしくなるほど平気になってしまった。

 初めはあんなに寂しかったのに。骨の髄に染みるほどに感じた。

 人間って儚い生き物ね。