「で、でも! これ、転びそうなんだもの……っ!」

「ですが、猫背のままだと癖がついてしまうのでまっすぐにしておきましょうね」

「……はい、分かりました……」


 もう、やるしかない。夜会というものには、士貴様の同伴で出席することが決まっている。士貴様に迷惑をかけるわけにはいかないから。

 私はやる気を入れて一歩踏み出すと力が入りすぎて着地が上手くできなかったみたいでふらつく。倒れてしまう、と思い体勢を保とうとしたけど慣れないドレスに靴で出来ない……本当に危ないかもと思ったその時、急に背中が支えられる。


「……っと、大丈夫か?」

「あ、士貴さまっ……!」


 支えてくださった先には士貴様がいて心配そうに見つめられる。そのまっすぐな瞳に我に帰ると彼から一歩離れて「だ、大丈夫です!」と呟く。


「そうか、ならいいが……無理はしないでくれ」

「はい、ありがとうございます。士貴様、何か御用があったのでは?」


 ここは士貴様の書斎から距離があるため、何か用事がないなら来ないだろう場所だから。