お昼休み、天候気温共に気持ちがよさそうと真理がいい、屋上で食べる事となった一華。
二人は片手にお弁当を持ち、軽い足取りで階段を上る。
屋上に通じる扉は鉄製で、所々が錆びていた。
付近の階段も薄気味悪く、誰も近寄ろうとしない。だが、一度外に出てしまえば世界は変わる。
青空が頭上いっぱいに広がり、肌を撫でる風は心地よい。屋上から見える花鳥街は建物で覆いつくされているが、所々にある緑が色合いを付け、ずっと見ていても飽きない。
そのような景色を知っている真理は、一華にも見てもらいたいと屋上に向かっていた。
「怪我の方はもう大丈夫?」
「うん。今はもうあの人達が絡んでくることは無くなったし、怪我ももう治ったよ」
「それならよかった!!」
先日、一華はいじめられ体中に痣を作らされていた。
最初は腕や足を痛がっていたが、真理と優輝が一華を支えたり、気が落ちそうな時は校舎裏で楽しい話をして過ごしていた。
「黒華先輩いるかな」
「さっき先生が先約がいるって言っていたから、多分いるんじゃないかな」
元々、今日は屋上で食べようと約束をしており、優輝にも屋上で今日はお昼ご飯を食べる事は伝わっている。
教師が言っていた”先約”がおそらく優輝の事。
話しながら歩いていると、屋上の扉へと辿り着いた。
扉を閉めているはずの南京錠は外されている為、真理は何も気にせず開ける。
キィィィイイと、少し耳障りな音が聞こえると、扉は完全に開かれる。
屋上に出ると、一華と真理は吹き抜ける風を体で浴び、気持ちよさそうに目を細めた。
「わぁ、確かに気持ちがいいね」
「でしょ! ここは本当に素敵なんだぁ。さすがに冬や夏は寒かったり暑かったりで長居できないけど」
「確かに、それは出来ないね。そりょり、先輩はどこだろう。私達より先に来ているとは思うんだけど」
二人がきょろきょろと周りを見ていると、扉の上から男性の声が聞こえ二人は振り返り声の主を探した。
「こっちだこっち」
「「こっち?」」
何処から聞こえているのか声に集中していると、二人の背後に一人の男性が降り降りた。
「っ!?」
驚きと焦りで、勢いよく振り返った一華は、目の前に立つ黒髪の男性、優輝を見つけ嬉しそうな笑みを浮かべた。
「お、俺に会えてうれしいのか?」
「っ、そんなことないです! 約束していたので、いなかったらどうしようと思っていただけです!」
素直になれない一華は頬を膨らませ文句を言うが、優輝はケラケラと笑い真面目に取り合わない。
楽しそうに話している二人を真理がニコニコしながら見ていた。
「それじゃ、あっちの方でお弁当にしましょう!」
屋上の奥を指さし、真理が言うと、二人も素直について行く。
円になるように座り、真理と一華は自身が持ってきたお弁当を広げる。だが、優輝は何も手に持っていない。
いつもはコンビニに袋などを持参し、パンやおにぎりを食べていた彼に、一華は不思議に思い問いかけた。
「黒華先輩、食べないんですか?」
「ん? お昼なら食っているぞ」
言っている優輝の口元は確かに、もごもごと動いている。
「何を食べているんですか?」
「イチゴ飴」
「…………ん? え、お昼ご飯を食べているんじゃないんですか?」
「食ってるぞ」
「何を?」
「イチゴ飴」
またしても同じ言葉を聞かされ、二人は顔を見合せた。
優輝のポケットや手、背中なども見たがいつものコンビニの袋はない。
「なんで? いつも持ってきていたのに」
「今日は買う時間がなかったんだよ。寝坊しちまって」
「それにしても…………」
飴がお昼ご飯は絶対に午後の授業は持つわけがない。
考えた末、一華は自身のお弁当に入っていつ卵焼きを箸で摘み、優輝の口元に持って行った。
「ん? え、何の真似だ?」
「少しですが、私のおかずを分けます。さすがに飴玉では不安なので」
口元に差しだされた卵焼きを見て、優輝はちらっと一華を見る。
これはいいのかと考えるが、優輝は何かに気づき口角を上げ礼を言い、口を開き卵焼きを口の中に入れ込んだ。
「ん、美味いな」
「甘い卵焼き、好きですか?」
「俺は甘いもんならなんでも好きだぞ」
ふーんと興味ないような返答するが、一華は今の言葉を忘れないように頭に刻む。そのまま、手に持っている箸で自身も食べようとおかずを取り口に運ぶ。
「「あ」」
「ん?」
一華が口の中に入れると、優輝と真理の声が重なる。
なぜ二人が声をそろえたのかわからず、首を傾げ口に運んだウインナーを味わっていた。
「一華、間接キスって知ってる?」
真理の言葉を頭の中で整理した一華は顔を赤面させ、何故か優輝の背中を叩いた。
「変態!!」
「お前が差し出してきたんだろ!!」
何故叩かれたのかわからない優輝は痛む背中をさすり、予備で持っていた割り箸で一華はお弁当を食べ続けた。
二人の様子を見て真理はくすくすと笑い、おにぎりを一口食べた。
――――――――ガラッ
三人が食べ始めると、屋上の扉が開かれた。
誰が入ってきたのだろうと扉を見ると、そこには銀髪の生徒、白野曄途だった。
手には紙袋が握られ、中にはクッキーが入った小袋が見え隠れしていた。
「あっ、黒薔薇先輩」
「俺の名前みたいに呼ぶな、黒華だ。薔薇じゃねぇ」
この場で驚きの顔を浮かべているのは真理。優輝を見て、目を大きく見開いていた。
真理の様子に、一華は顔面蒼白。口をパクパクとして、何とかこの場を誤魔化そうとしていた。
「黒薔薇……くろっ……え。黒華先輩の個性の花って、もしかして、黒い薔薇?」
二人は片手にお弁当を持ち、軽い足取りで階段を上る。
屋上に通じる扉は鉄製で、所々が錆びていた。
付近の階段も薄気味悪く、誰も近寄ろうとしない。だが、一度外に出てしまえば世界は変わる。
青空が頭上いっぱいに広がり、肌を撫でる風は心地よい。屋上から見える花鳥街は建物で覆いつくされているが、所々にある緑が色合いを付け、ずっと見ていても飽きない。
そのような景色を知っている真理は、一華にも見てもらいたいと屋上に向かっていた。
「怪我の方はもう大丈夫?」
「うん。今はもうあの人達が絡んでくることは無くなったし、怪我ももう治ったよ」
「それならよかった!!」
先日、一華はいじめられ体中に痣を作らされていた。
最初は腕や足を痛がっていたが、真理と優輝が一華を支えたり、気が落ちそうな時は校舎裏で楽しい話をして過ごしていた。
「黒華先輩いるかな」
「さっき先生が先約がいるって言っていたから、多分いるんじゃないかな」
元々、今日は屋上で食べようと約束をしており、優輝にも屋上で今日はお昼ご飯を食べる事は伝わっている。
教師が言っていた”先約”がおそらく優輝の事。
話しながら歩いていると、屋上の扉へと辿り着いた。
扉を閉めているはずの南京錠は外されている為、真理は何も気にせず開ける。
キィィィイイと、少し耳障りな音が聞こえると、扉は完全に開かれる。
屋上に出ると、一華と真理は吹き抜ける風を体で浴び、気持ちよさそうに目を細めた。
「わぁ、確かに気持ちがいいね」
「でしょ! ここは本当に素敵なんだぁ。さすがに冬や夏は寒かったり暑かったりで長居できないけど」
「確かに、それは出来ないね。そりょり、先輩はどこだろう。私達より先に来ているとは思うんだけど」
二人がきょろきょろと周りを見ていると、扉の上から男性の声が聞こえ二人は振り返り声の主を探した。
「こっちだこっち」
「「こっち?」」
何処から聞こえているのか声に集中していると、二人の背後に一人の男性が降り降りた。
「っ!?」
驚きと焦りで、勢いよく振り返った一華は、目の前に立つ黒髪の男性、優輝を見つけ嬉しそうな笑みを浮かべた。
「お、俺に会えてうれしいのか?」
「っ、そんなことないです! 約束していたので、いなかったらどうしようと思っていただけです!」
素直になれない一華は頬を膨らませ文句を言うが、優輝はケラケラと笑い真面目に取り合わない。
楽しそうに話している二人を真理がニコニコしながら見ていた。
「それじゃ、あっちの方でお弁当にしましょう!」
屋上の奥を指さし、真理が言うと、二人も素直について行く。
円になるように座り、真理と一華は自身が持ってきたお弁当を広げる。だが、優輝は何も手に持っていない。
いつもはコンビニに袋などを持参し、パンやおにぎりを食べていた彼に、一華は不思議に思い問いかけた。
「黒華先輩、食べないんですか?」
「ん? お昼なら食っているぞ」
言っている優輝の口元は確かに、もごもごと動いている。
「何を食べているんですか?」
「イチゴ飴」
「…………ん? え、お昼ご飯を食べているんじゃないんですか?」
「食ってるぞ」
「何を?」
「イチゴ飴」
またしても同じ言葉を聞かされ、二人は顔を見合せた。
優輝のポケットや手、背中なども見たがいつものコンビニの袋はない。
「なんで? いつも持ってきていたのに」
「今日は買う時間がなかったんだよ。寝坊しちまって」
「それにしても…………」
飴がお昼ご飯は絶対に午後の授業は持つわけがない。
考えた末、一華は自身のお弁当に入っていつ卵焼きを箸で摘み、優輝の口元に持って行った。
「ん? え、何の真似だ?」
「少しですが、私のおかずを分けます。さすがに飴玉では不安なので」
口元に差しだされた卵焼きを見て、優輝はちらっと一華を見る。
これはいいのかと考えるが、優輝は何かに気づき口角を上げ礼を言い、口を開き卵焼きを口の中に入れ込んだ。
「ん、美味いな」
「甘い卵焼き、好きですか?」
「俺は甘いもんならなんでも好きだぞ」
ふーんと興味ないような返答するが、一華は今の言葉を忘れないように頭に刻む。そのまま、手に持っている箸で自身も食べようとおかずを取り口に運ぶ。
「「あ」」
「ん?」
一華が口の中に入れると、優輝と真理の声が重なる。
なぜ二人が声をそろえたのかわからず、首を傾げ口に運んだウインナーを味わっていた。
「一華、間接キスって知ってる?」
真理の言葉を頭の中で整理した一華は顔を赤面させ、何故か優輝の背中を叩いた。
「変態!!」
「お前が差し出してきたんだろ!!」
何故叩かれたのかわからない優輝は痛む背中をさすり、予備で持っていた割り箸で一華はお弁当を食べ続けた。
二人の様子を見て真理はくすくすと笑い、おにぎりを一口食べた。
――――――――ガラッ
三人が食べ始めると、屋上の扉が開かれた。
誰が入ってきたのだろうと扉を見ると、そこには銀髪の生徒、白野曄途だった。
手には紙袋が握られ、中にはクッキーが入った小袋が見え隠れしていた。
「あっ、黒薔薇先輩」
「俺の名前みたいに呼ぶな、黒華だ。薔薇じゃねぇ」
この場で驚きの顔を浮かべているのは真理。優輝を見て、目を大きく見開いていた。
真理の様子に、一華は顔面蒼白。口をパクパクとして、何とかこの場を誤魔化そうとしていた。
「黒薔薇……くろっ……え。黒華先輩の個性の花って、もしかして、黒い薔薇?」