「それじゃ、白野君はどこか見つからない所に隠れていて。見つかっては駄目よ。もう、誰が今回の件に関わっているか割れているの」
「わかりました、先輩をお願いします!」
「任せて頂戴」
格好よくどや顔を向けた朝花は、いつもの強気な表情でバイクを走り出した。
二人の背中が見えなくなるか、ならないかくらいのタイミングで、パトカーが見えて来る。
早く曄途は隠れなければならないはずなのに、何故かその場から動くことはせず二人を見送っていた。
パトカーは止まっている曄途の近くで止まり、ドアが開かれた。
一人の警察官が立ち尽くしている曄途に近付き、声をかけた。
「君が白野曄途君だね」
声を掛けられた事により、曄途はようやく動き出し振り向いた。
「はい」
「なぜ、君はこんな事をしたのかな?」
「さぁ、何故でしょう。少々、自由が欲しかったから。とでも言いましょうか」
笑みを浮かべ言い切った彼を見て、話しにならないとすぐに警察官は諦めた。
ため息を吐き、他の警察官に連絡を取る。その間にも、森へと向かった二人は進む。そのことに曄途はほくそ笑み、喜んで警察官に捕まった。
「どうか、最後まで諦めないでください。必ず、黒華先輩を助けてくださいね、蝶赤先輩」
曄途の声が聞こえたのか、一華はバイクに乗りながら後ろを振り向いた。だが、すぐに前を向き朝花に問いかけた。
「先生、なんで急に協力してくださったんですか?」
「私も、何故私自身が協力しているのかわからないわ」
意外な返答に目を丸くし、一華は朝花の顔を覗きこむ。一瞬、一華をちらっと見た彼女は、また前を向いた。
「私は、優輝を助けたいの。昔、酷いいじめにあい、自殺まで考えていたあの子をもう、見たくはない。私は、また見たいの。あの子の笑顔を。私はまた聞きたいの、あの子の楽しい話を。でも、今は聞けない、見る事が出来ない。もし、見る事が出来るのなら。あの子がまた笑顔を見せてくれる時があるのなら…………。私は何でもやるわ。そう、頭より体が先に気づいた結果かもしれないわね」
ふふっと笑い、前を向き直すと、前方に青空を隠すほどの大きな森が現れた。
あの森の中に、お社があり、そこに女神が封印されている。
一華が前を見ていると、朝花が優輝の名前を出した。
「蝶赤さん、優輝もおそらく同じところに向かっているはずよ」
「っ、え、同じところって……?」
「もちろん。女神が封印されている場所よ」
何故朝花が知っているのか疑問を抱き問いかけようとするが、それより先に朝花が諦めたような言葉を発した。
「あはは、前を見て」
言われた通り前を向くと、森の前には数多くのパトカー。
「なんで、あんなに」
「言ったでしょ。貴方達の考えや行動パターンはもう読まれているの。先回りされていてもおかしくはないわ」
一華はどうしようと朝花の服を強く掴む。だが、一華の心配とは裏腹に朝花は一粒の汗を流しつつ口角を上げた。
「突っ込むしかないわ。あーあ、教師免許剥奪されるなぁ。仕方がないけど」
「え、そんな事駄目ですよ!」
一華が慌てて止めようとするも、朝花は止まらない。楽し気に笑い、バイクのスピードを上げた。
森の出入り口まであともう少し。バイクの音に気づき、パトカーから姿を現した警察官が目に入る。
止めなければ朝花の立場が危うい。巻き込んでしまった身として、一華は罪悪感に苛まれていた。
「気にしなくて大丈夫よ」
「…………でも」
「私は、血の繋がりがないけれど、義弟である優輝が好き。それと同じく、優輝が愛した君を信じたいと思ったの。これは私の意思、だから安心して。私は大人、自分で自分の尻ぬぐいくらいできるわ」
笑顔を浮かべた朝花に、一華は何も返せなくなる。だが、朝花を掴んでいる手には力が込められた。
「絶対に、帰ってきますので。笑顔で、絶対に!!」
「うん、待っているわ。大丈夫、貴方達なら出来るわ。出来る、絶対に」
笑顔で顔を見合わせていると、パトカーから降りた警察官が止まるように警棒片手に前に立ち塞がる。だが、朝花は止まらない。
「行くわよ、衝撃に備えて!!!」
「はい!!」
朝花の身体にしっかりと抱き着き、彼女がしっかりと掴んだことを確認すると、姿勢を低くしスピードを上げた。
止まらないバイクに警察官は戸惑いを見せるが、それでも朝花は止まらす走り続ける。
「止まれ!! 止まれ!!」
朝花は額から一粒の汗を流し、グリップを握り直した。
警察官前まで行くと、突如バイクを右に曲げ傾かせる。ギギギッ―と警察官の声をかき消すほどの大きな音を出し、バイクを盾に警察官を自身達から離させた。
「あら、ごめんなさい。少し急いでいたの、許してね」
舌を出し誤魔化そうとする朝花の後ろ、一華がバイクを降りて森の中に走り出した。
警察官の一人が気づき駆け出し、他の警察官も動き出す。一華が後ろを振り向き警察官を確認すると、視界に見えたのは朝花の強気な顔。右の手の親指で右を差している。
すぐに何を言いたいのか察した一華は、前を振り向き全力で走る。
「あとは任せたわよ、蝶赤さん。必ず、笑顔で戻ってきて」
言うと、朝花は無人のバイクを警察官へと向けて走らせた。
警察官は向かって来ているバイクに驚き、咄嗟に横へと跳ぶ。一華もわかっていたため、すぐ横へと走り被害にあわない経路に移動した。
何にも当たらなかったバイクは途中で横転、煙を出し止まった。その数秒後、一華が森の中に足を踏み入れた瞬間、大きな爆発が起き一華は森の中に吹っ飛ばされた。
同時にヘルメットが飛んでしまい、木にぶつかり地面に落ちる。体を地面に打ち付けてしまい、、痛みで顔を歪ませ一華はすぐに起き上がる事が出来なかった。
「わかりました、先輩をお願いします!」
「任せて頂戴」
格好よくどや顔を向けた朝花は、いつもの強気な表情でバイクを走り出した。
二人の背中が見えなくなるか、ならないかくらいのタイミングで、パトカーが見えて来る。
早く曄途は隠れなければならないはずなのに、何故かその場から動くことはせず二人を見送っていた。
パトカーは止まっている曄途の近くで止まり、ドアが開かれた。
一人の警察官が立ち尽くしている曄途に近付き、声をかけた。
「君が白野曄途君だね」
声を掛けられた事により、曄途はようやく動き出し振り向いた。
「はい」
「なぜ、君はこんな事をしたのかな?」
「さぁ、何故でしょう。少々、自由が欲しかったから。とでも言いましょうか」
笑みを浮かべ言い切った彼を見て、話しにならないとすぐに警察官は諦めた。
ため息を吐き、他の警察官に連絡を取る。その間にも、森へと向かった二人は進む。そのことに曄途はほくそ笑み、喜んで警察官に捕まった。
「どうか、最後まで諦めないでください。必ず、黒華先輩を助けてくださいね、蝶赤先輩」
曄途の声が聞こえたのか、一華はバイクに乗りながら後ろを振り向いた。だが、すぐに前を向き朝花に問いかけた。
「先生、なんで急に協力してくださったんですか?」
「私も、何故私自身が協力しているのかわからないわ」
意外な返答に目を丸くし、一華は朝花の顔を覗きこむ。一瞬、一華をちらっと見た彼女は、また前を向いた。
「私は、優輝を助けたいの。昔、酷いいじめにあい、自殺まで考えていたあの子をもう、見たくはない。私は、また見たいの。あの子の笑顔を。私はまた聞きたいの、あの子の楽しい話を。でも、今は聞けない、見る事が出来ない。もし、見る事が出来るのなら。あの子がまた笑顔を見せてくれる時があるのなら…………。私は何でもやるわ。そう、頭より体が先に気づいた結果かもしれないわね」
ふふっと笑い、前を向き直すと、前方に青空を隠すほどの大きな森が現れた。
あの森の中に、お社があり、そこに女神が封印されている。
一華が前を見ていると、朝花が優輝の名前を出した。
「蝶赤さん、優輝もおそらく同じところに向かっているはずよ」
「っ、え、同じところって……?」
「もちろん。女神が封印されている場所よ」
何故朝花が知っているのか疑問を抱き問いかけようとするが、それより先に朝花が諦めたような言葉を発した。
「あはは、前を見て」
言われた通り前を向くと、森の前には数多くのパトカー。
「なんで、あんなに」
「言ったでしょ。貴方達の考えや行動パターンはもう読まれているの。先回りされていてもおかしくはないわ」
一華はどうしようと朝花の服を強く掴む。だが、一華の心配とは裏腹に朝花は一粒の汗を流しつつ口角を上げた。
「突っ込むしかないわ。あーあ、教師免許剥奪されるなぁ。仕方がないけど」
「え、そんな事駄目ですよ!」
一華が慌てて止めようとするも、朝花は止まらない。楽し気に笑い、バイクのスピードを上げた。
森の出入り口まであともう少し。バイクの音に気づき、パトカーから姿を現した警察官が目に入る。
止めなければ朝花の立場が危うい。巻き込んでしまった身として、一華は罪悪感に苛まれていた。
「気にしなくて大丈夫よ」
「…………でも」
「私は、血の繋がりがないけれど、義弟である優輝が好き。それと同じく、優輝が愛した君を信じたいと思ったの。これは私の意思、だから安心して。私は大人、自分で自分の尻ぬぐいくらいできるわ」
笑顔を浮かべた朝花に、一華は何も返せなくなる。だが、朝花を掴んでいる手には力が込められた。
「絶対に、帰ってきますので。笑顔で、絶対に!!」
「うん、待っているわ。大丈夫、貴方達なら出来るわ。出来る、絶対に」
笑顔で顔を見合わせていると、パトカーから降りた警察官が止まるように警棒片手に前に立ち塞がる。だが、朝花は止まらない。
「行くわよ、衝撃に備えて!!!」
「はい!!」
朝花の身体にしっかりと抱き着き、彼女がしっかりと掴んだことを確認すると、姿勢を低くしスピードを上げた。
止まらないバイクに警察官は戸惑いを見せるが、それでも朝花は止まらす走り続ける。
「止まれ!! 止まれ!!」
朝花は額から一粒の汗を流し、グリップを握り直した。
警察官前まで行くと、突如バイクを右に曲げ傾かせる。ギギギッ―と警察官の声をかき消すほどの大きな音を出し、バイクを盾に警察官を自身達から離させた。
「あら、ごめんなさい。少し急いでいたの、許してね」
舌を出し誤魔化そうとする朝花の後ろ、一華がバイクを降りて森の中に走り出した。
警察官の一人が気づき駆け出し、他の警察官も動き出す。一華が後ろを振り向き警察官を確認すると、視界に見えたのは朝花の強気な顔。右の手の親指で右を差している。
すぐに何を言いたいのか察した一華は、前を振り向き全力で走る。
「あとは任せたわよ、蝶赤さん。必ず、笑顔で戻ってきて」
言うと、朝花は無人のバイクを警察官へと向けて走らせた。
警察官は向かって来ているバイクに驚き、咄嗟に横へと跳ぶ。一華もわかっていたため、すぐ横へと走り被害にあわない経路に移動した。
何にも当たらなかったバイクは途中で横転、煙を出し止まった。その数秒後、一華が森の中に足を踏み入れた瞬間、大きな爆発が起き一華は森の中に吹っ飛ばされた。
同時にヘルメットが飛んでしまい、木にぶつかり地面に落ちる。体を地面に打ち付けてしまい、、痛みで顔を歪ませ一華はすぐに起き上がる事が出来なかった。