「まぁ、俺も単価切っちまったしな。何もしないのは些か胸糞悪い。だだ、俺達のような一般人が出来る事は限られる。正直、俺達がどんなに足掻いたところで本人に変わる意思がなければどうする事も出来ない。環境を変えるのも、あいつが自ら動かんとならん事だ」
足を組み顎に手を当て考える優輝の姿に見惚れつつ、一華と真理も同じく考え込んだ。
「…………それじゃ、白野君の心を動かす事が出来れば、少しは可能性があるって事でしょうか」
「そうだな。だが、人の気持ちを動かすのはそう簡単ではない。それに、あいつの心は恐怖心によって塗り固められているように感じる。あれはそう簡単に崩すことなど出来んぞ。出会ったばかりの俺達ならなおの事」
「それなら、一緒に買い物したりとか」
「それをあいつの執事が許すと思うか? もう俺達とは関わらんようにしろとまで言われているんだ。難しいだろう」
「それなら、今まで通りお昼を一緒に食べて…………」
「あいつが素直に来るならそれでもいいが。おそらくそれも難しい。あいつが最後に見せた焦った顔、あれは俺達の立場を案じてのもの。何もかも諦めて、自身の気持ちを閉じ込めているあいつは俺達との飯を拒否るだろうな」
「なら、どうすればいいんですか?」
一華の質問に優輝は押し黙る。眉間に深い皺を寄せ、考え込んでしまった。
二人の会話に、自分も案を出さなければと真理も頭をフル回転させる。だが、二人のように頭の回転が早いわけでも、頭がいい訳でもない真理は、曄途を説得させる案が出てこなく項垂れた。
「…………白野君、なんで今まで私達と一緒に居てくれたんだろう…………」
真理から呟かれた言葉を聞き、優輝はハッとして口角を上げた。
「あいつ、そういや押しに弱かったな」
「「え?」」
彼の呟きを聞き、二人は疑問の声を漏らす。
二人の視線を受け、楽し気に笑いコーヒーを一口。テーブルに肘を置き、白い八重歯を見せ話し出した。
「これから、ガンガンごり押ししていくぞ」
体育大会の振り替え休日が終わり、学校が始まる。
何時ものようにお昼休みに屋上に向かっている一華と真理は、悩ましそうに険しい顔を浮かべ階段を上っていた。
「本当に先輩のお願いしても良かったのかな」
「い、いと思うよ。多分…………」
お互い顔を見合せ、屋上の扉を開け外の風を陰険な雰囲気をただ酔わせている廊下に取り入れた。
「まだ来ていないみたいだね」
「うん、大丈夫かな」
屋上の奥に向かい、お弁当を広げていると扉がガタガタと音を鳴らし始めた。
その数秒後、曄途の首根っこを掴み笑みを浮かべ引きづっている優輝が扉を潜り二人へと手を振った。
「おまたせぇ〜」
「「待って!?」」
ごり押しと言ってもやりすぎだと、二人は慌てたように優輝に叫ぶ。だが、彼は一切気にする様子を見せず、何が起きたのかわからず魂の抜けている曄途を引きずり二人の前まで移動した。
「お待たせ、結構手間取ったわ」
「いやいや、ごり押しにも限度があるでしょう。階段とか大丈夫だったのですか?」
「その時にはまだこいつは自分で足を動かしていたからな、自力で登っていたぞ」
優輝の言葉が本当なのか嘘なのか。一華は今だ首根っこを掴まれ動こうとしない曄途を見る。
口からは魂が抜けており、無気力状態。なぜこのようになってしまったのかわからず、優輝に訴えるような瞳を向けた。
「だって、こいつが俺をめっちゃ避けまくるし、笑顔で制止しようとしてきてめんどくさかったから。無理やり連れてきた。言葉の通じねぇ奴にはこれが一番いいだろう」
「そういう問題ではないような気がするんですが…………」
やっと首根っこを離した優輝は、床に背中を打ち付け変な声を出した曄途など気にせず一華の隣に座った。
「うげっ! って、なんなんですか黒華先輩!」
痛みにより意識が戻った曄途は、怒りを優輝にぶつけた。だが、そんな彼の文句などどこ吹く風のように気にせず、ポケットから一つの飴を取り出し舐めようとした。だが、それを瞬時に一華が止める。
「ご飯、食べてください」
「…………はい」
黒い笑みを浮かべる一華に逆らってはいけない。そう瞬時に感じ取った優輝は汗を流し、飴をポケットにしまい込む。
「今日は何を持ってきてくれたんだぁ?」
「今日はサンドイッチにしてみましたよ。卵とトマト、ジャムなどあります。どれがいいですか?」
当たり前のように一つのお弁当をシェアする二人を羨ましそうに見ている真理は、まだ背中をさすっている曄途を見た。
「白野君、ごめんね。私が一緒に食べたかったの。先輩はただ協力してくれただけ。だから、先輩を恨まないでくれると嬉しいなぁ」
頬をポリポリと掻きながら眉を下げ言う真理に、曄途はなんと返せばいいのか言葉が思いつかず目を逸らし、いつもの仮面をかぶる。
「いえ、大丈夫ですよ。そのように言って頂けて嬉しいです」
仮面のような笑みを浮かべた彼に、真理は悲し気に顔を下げる。だが、すぐに負けないように笑みを浮かべお弁当を広げた。
「一緒にご飯を食べよ! 今日のお弁当は何?」
体育大会の出来事がまるでなかったかのようにふるまう三人に、曄途は笑顔を浮かべているにしろ困惑し、何も言えない。
彼が戸惑っていることに気づいている真理は、あえて何も答えずお弁当を食べ始めた。
「今日の白野君のご飯は何?」
笑顔で再度同じ質問をした彼女に、曄途の耳に一瞬、心臓が高鳴る音が聞こえた、そんな気がした。
足を組み顎に手を当て考える優輝の姿に見惚れつつ、一華と真理も同じく考え込んだ。
「…………それじゃ、白野君の心を動かす事が出来れば、少しは可能性があるって事でしょうか」
「そうだな。だが、人の気持ちを動かすのはそう簡単ではない。それに、あいつの心は恐怖心によって塗り固められているように感じる。あれはそう簡単に崩すことなど出来んぞ。出会ったばかりの俺達ならなおの事」
「それなら、一緒に買い物したりとか」
「それをあいつの執事が許すと思うか? もう俺達とは関わらんようにしろとまで言われているんだ。難しいだろう」
「それなら、今まで通りお昼を一緒に食べて…………」
「あいつが素直に来るならそれでもいいが。おそらくそれも難しい。あいつが最後に見せた焦った顔、あれは俺達の立場を案じてのもの。何もかも諦めて、自身の気持ちを閉じ込めているあいつは俺達との飯を拒否るだろうな」
「なら、どうすればいいんですか?」
一華の質問に優輝は押し黙る。眉間に深い皺を寄せ、考え込んでしまった。
二人の会話に、自分も案を出さなければと真理も頭をフル回転させる。だが、二人のように頭の回転が早いわけでも、頭がいい訳でもない真理は、曄途を説得させる案が出てこなく項垂れた。
「…………白野君、なんで今まで私達と一緒に居てくれたんだろう…………」
真理から呟かれた言葉を聞き、優輝はハッとして口角を上げた。
「あいつ、そういや押しに弱かったな」
「「え?」」
彼の呟きを聞き、二人は疑問の声を漏らす。
二人の視線を受け、楽し気に笑いコーヒーを一口。テーブルに肘を置き、白い八重歯を見せ話し出した。
「これから、ガンガンごり押ししていくぞ」
体育大会の振り替え休日が終わり、学校が始まる。
何時ものようにお昼休みに屋上に向かっている一華と真理は、悩ましそうに険しい顔を浮かべ階段を上っていた。
「本当に先輩のお願いしても良かったのかな」
「い、いと思うよ。多分…………」
お互い顔を見合せ、屋上の扉を開け外の風を陰険な雰囲気をただ酔わせている廊下に取り入れた。
「まだ来ていないみたいだね」
「うん、大丈夫かな」
屋上の奥に向かい、お弁当を広げていると扉がガタガタと音を鳴らし始めた。
その数秒後、曄途の首根っこを掴み笑みを浮かべ引きづっている優輝が扉を潜り二人へと手を振った。
「おまたせぇ〜」
「「待って!?」」
ごり押しと言ってもやりすぎだと、二人は慌てたように優輝に叫ぶ。だが、彼は一切気にする様子を見せず、何が起きたのかわからず魂の抜けている曄途を引きずり二人の前まで移動した。
「お待たせ、結構手間取ったわ」
「いやいや、ごり押しにも限度があるでしょう。階段とか大丈夫だったのですか?」
「その時にはまだこいつは自分で足を動かしていたからな、自力で登っていたぞ」
優輝の言葉が本当なのか嘘なのか。一華は今だ首根っこを掴まれ動こうとしない曄途を見る。
口からは魂が抜けており、無気力状態。なぜこのようになってしまったのかわからず、優輝に訴えるような瞳を向けた。
「だって、こいつが俺をめっちゃ避けまくるし、笑顔で制止しようとしてきてめんどくさかったから。無理やり連れてきた。言葉の通じねぇ奴にはこれが一番いいだろう」
「そういう問題ではないような気がするんですが…………」
やっと首根っこを離した優輝は、床に背中を打ち付け変な声を出した曄途など気にせず一華の隣に座った。
「うげっ! って、なんなんですか黒華先輩!」
痛みにより意識が戻った曄途は、怒りを優輝にぶつけた。だが、そんな彼の文句などどこ吹く風のように気にせず、ポケットから一つの飴を取り出し舐めようとした。だが、それを瞬時に一華が止める。
「ご飯、食べてください」
「…………はい」
黒い笑みを浮かべる一華に逆らってはいけない。そう瞬時に感じ取った優輝は汗を流し、飴をポケットにしまい込む。
「今日は何を持ってきてくれたんだぁ?」
「今日はサンドイッチにしてみましたよ。卵とトマト、ジャムなどあります。どれがいいですか?」
当たり前のように一つのお弁当をシェアする二人を羨ましそうに見ている真理は、まだ背中をさすっている曄途を見た。
「白野君、ごめんね。私が一緒に食べたかったの。先輩はただ協力してくれただけ。だから、先輩を恨まないでくれると嬉しいなぁ」
頬をポリポリと掻きながら眉を下げ言う真理に、曄途はなんと返せばいいのか言葉が思いつかず目を逸らし、いつもの仮面をかぶる。
「いえ、大丈夫ですよ。そのように言って頂けて嬉しいです」
仮面のような笑みを浮かべた彼に、真理は悲し気に顔を下げる。だが、すぐに負けないように笑みを浮かべお弁当を広げた。
「一緒にご飯を食べよ! 今日のお弁当は何?」
体育大会の出来事がまるでなかったかのようにふるまう三人に、曄途は笑顔を浮かべているにしろ困惑し、何も言えない。
彼が戸惑っていることに気づいている真理は、あえて何も答えずお弁当を食べ始めた。
「今日の白野君のご飯は何?」
笑顔で再度同じ質問をした彼女に、曄途の耳に一瞬、心臓が高鳴る音が聞こえた、そんな気がした。