三人の輪に交わり、袋の中の子袋を取り出し始めた曄途。制服が汚れないようにハンカチを取り出し、正座。礼儀正しく、本当に一番下なのか疑ってしまう。
真理は先程の曄途の言葉で目を輝かせ、優輝を見続けた。
視線を煩わしいと感じ、優輝はため息と共に一輪の黒い薔薇を出し無言で渡す。
「わぁ、これが黒い薔薇。凄く綺麗…………」
見た瞬間大興奮、真理は黒い薔薇を受け取り太陽にかざしたり、一枚の花びらをちぎり肌触りを楽しんだりと。様々な楽しみ方をしていた。
そんな彼女を一華は神妙な面持ちで見続ける。
優輝は二人の様子を楽しみながらふと、隣に座る曄途を見た。
「おい、おめぇは何で屋上に来たんだ?」
「外の風に当たりたかっただけですよ」
ニコッと微笑みながら紙袋から取り出したクッキーの袋を開け、一枚食べる。さくっと音を鳴らし、口に手を添え上品に食べていた。
「ね、ねぇ、白野君。そのクッキーは持ってきたの?」
黒薔薇を弄びながら、薄く赤くなっている顔を向け真理は曄途に問いかけた。
「いえ、こちらは同じクラスの女性が渡してくださったのです」
「あ、そ、そうなんだぁ……」
一瞬、顔が硬直した真理は、嫉妬心を誤魔化すようにゆっくりと顔を逸らす。そんな中、隣に座っている一華は、そぉっと紙袋の中を覗き見た。
紙袋は長方形で、ほどほどに大きい。そんな紙袋の中には、ラッピングされている小袋が沢山。中にはチョコやクッキー、マフィンやマドレーヌなど。様々なお菓子が入っていた。
「これ、すべて貰い物?」
「はい。優しいクラスメイトで、本当に喜ばしいです」
一つの小袋の中に入っていたクッキーを食べ終わると、綺麗に畳み紙袋に戻す。今食べたものでお腹が膨れ、残りは家で食べようと隣に置く。
仕草一つ一つに気品があり、近寄りがたい。高根の花と呼ばれてもおかしくない彼だが、優輝だけは今にも吐きそうな顔色を浮かべていた。
「黒華先輩? 顔を青くしてどうしたんですか?」
「なんでもねぇ。ただ、こいつが気持ち悪いだけだ」
優輝の視線の先には、きょとんと目を丸くしている曄途の姿。
優輝が言っている気持ち悪い奴とは曄途の事。真理は目をぱちぱちさせ、頬を膨らませ怒り出した。
「何を急に言っているんですか黒華先輩! ここまで気品に溢れている人が気持ち悪いなど、ありえません!」
優輝の肩をポコポコ叩く彼女の隣で、一華が曄途を横目で見た。
「気持ち悪いは確かに失礼ですが…………」
「おい」
「なんか、仮面をつけているようには見えるかな」
優輝の不満の声を軽く受け流し、一華は考えながら言う。
まさかそのように言われるとは思っておらず、曄途は目を少しだけ開いた。
「っ、仮面?」
「いや、なんとなくね、なんとなく。変なことを言ってごめんなさい」
目を離し、お弁当を食べ始める一華。曄途は返す言葉が重いつかず、沈黙。何も返さず顔を俯かせた。
気まずい空気が流れ、真理は慌てて話題を変えようと笑顔で手を叩いた。
「そ、そうだ! あともう少しで体育大会でしょ? もしよかったらこの四人でお昼ご飯を食べましょう!」
真理からの提案に、一華は彼女を見る。曄途は「え?」と疑問の声を漏らし、優輝は自分には興味ないと言うように青空を眺めていた。その時にはいつの間にかおにぎりは無くなっており、口の周りに米粒が付いている。
「なに、自分は関係ないという顔を浮かべているんですか、黒華先輩も一緒ですよ?」
「俺は一華が参加するのなら参加する。しないのならしない」
口元に付いた米粒を親指で取り、空地に放り投げながら一華を見た。
「そうやって……。はぁ、私はいいですよ。白野君はどうかな?」
「え、でも、ご迷惑では? 僕は今日たまたまご一緒しただけなので…………」
「そんなことないよ。友達が増えるのは嬉しいし、もっと話したい」
笑みを浮かべながら言う一華へ、優輝は何か言いたげな視線を送る。
「…………黒華先輩も一緒に食べるのでしょう?」
「俺はお前に話したとか言われたことないんだけど」
「私が言う前に黒華先輩が声をかけてくるじゃないですか。言う暇がありませんよ」
一華の言葉に「はっ」と言う顔を浮かべ、優輝は何故か考え込み始めた。
じぃっと彼を見る一華。そんな二人を無視し、真理が曄途に笑みを浮かべた。
「私達の事は特に気にしなくていいよ。白野君が私達と一緒にお昼を過ごしてもいいよって思ってくれたらで」
真理の言葉に、今だ遠慮している曄途。難しい顔を浮かべている彼に、優輝は目を細めゆっくりと手を伸ばした。かと思うと、曄途の持ってきた紙袋の中に入っている小袋を一つ、手に取った。
「なら、これ一つで手を打ってやる」
「え、手を打つとは?」
「おめぇと一緒に飯を食ってやるよ。これでお互い様だ、遠慮はいらん」
取った小袋には、カップに入っているチョコレートが入っていた。
三つ入っているうちの一つを取り出し、口に放り込む。手についたチョコをなめとり、「美味いな」と零した。
「勝手に何食べているんですか」
「止めなかったあいつが悪いんだろう。これであいつは俺と一緒に飯を食う事は約束された。俺と空という事は、おめぇらとも食うという事だ」
胸を張って言い切った彼の言い分は意味がわからず、一華は見せつけるようにため息を吐いた。
真理は目を輝かせ、ガッツポーズ。優輝を尊敬のまなざしで見る。
「そういう事だからな、お前は体育祭当日、俺達と飯を食う。約束な」
「え、え?」
話しの流れがわからず、曄途は二人からの圧に負け頷いてしまった。
真理は先程の曄途の言葉で目を輝かせ、優輝を見続けた。
視線を煩わしいと感じ、優輝はため息と共に一輪の黒い薔薇を出し無言で渡す。
「わぁ、これが黒い薔薇。凄く綺麗…………」
見た瞬間大興奮、真理は黒い薔薇を受け取り太陽にかざしたり、一枚の花びらをちぎり肌触りを楽しんだりと。様々な楽しみ方をしていた。
そんな彼女を一華は神妙な面持ちで見続ける。
優輝は二人の様子を楽しみながらふと、隣に座る曄途を見た。
「おい、おめぇは何で屋上に来たんだ?」
「外の風に当たりたかっただけですよ」
ニコッと微笑みながら紙袋から取り出したクッキーの袋を開け、一枚食べる。さくっと音を鳴らし、口に手を添え上品に食べていた。
「ね、ねぇ、白野君。そのクッキーは持ってきたの?」
黒薔薇を弄びながら、薄く赤くなっている顔を向け真理は曄途に問いかけた。
「いえ、こちらは同じクラスの女性が渡してくださったのです」
「あ、そ、そうなんだぁ……」
一瞬、顔が硬直した真理は、嫉妬心を誤魔化すようにゆっくりと顔を逸らす。そんな中、隣に座っている一華は、そぉっと紙袋の中を覗き見た。
紙袋は長方形で、ほどほどに大きい。そんな紙袋の中には、ラッピングされている小袋が沢山。中にはチョコやクッキー、マフィンやマドレーヌなど。様々なお菓子が入っていた。
「これ、すべて貰い物?」
「はい。優しいクラスメイトで、本当に喜ばしいです」
一つの小袋の中に入っていたクッキーを食べ終わると、綺麗に畳み紙袋に戻す。今食べたものでお腹が膨れ、残りは家で食べようと隣に置く。
仕草一つ一つに気品があり、近寄りがたい。高根の花と呼ばれてもおかしくない彼だが、優輝だけは今にも吐きそうな顔色を浮かべていた。
「黒華先輩? 顔を青くしてどうしたんですか?」
「なんでもねぇ。ただ、こいつが気持ち悪いだけだ」
優輝の視線の先には、きょとんと目を丸くしている曄途の姿。
優輝が言っている気持ち悪い奴とは曄途の事。真理は目をぱちぱちさせ、頬を膨らませ怒り出した。
「何を急に言っているんですか黒華先輩! ここまで気品に溢れている人が気持ち悪いなど、ありえません!」
優輝の肩をポコポコ叩く彼女の隣で、一華が曄途を横目で見た。
「気持ち悪いは確かに失礼ですが…………」
「おい」
「なんか、仮面をつけているようには見えるかな」
優輝の不満の声を軽く受け流し、一華は考えながら言う。
まさかそのように言われるとは思っておらず、曄途は目を少しだけ開いた。
「っ、仮面?」
「いや、なんとなくね、なんとなく。変なことを言ってごめんなさい」
目を離し、お弁当を食べ始める一華。曄途は返す言葉が重いつかず、沈黙。何も返さず顔を俯かせた。
気まずい空気が流れ、真理は慌てて話題を変えようと笑顔で手を叩いた。
「そ、そうだ! あともう少しで体育大会でしょ? もしよかったらこの四人でお昼ご飯を食べましょう!」
真理からの提案に、一華は彼女を見る。曄途は「え?」と疑問の声を漏らし、優輝は自分には興味ないと言うように青空を眺めていた。その時にはいつの間にかおにぎりは無くなっており、口の周りに米粒が付いている。
「なに、自分は関係ないという顔を浮かべているんですか、黒華先輩も一緒ですよ?」
「俺は一華が参加するのなら参加する。しないのならしない」
口元に付いた米粒を親指で取り、空地に放り投げながら一華を見た。
「そうやって……。はぁ、私はいいですよ。白野君はどうかな?」
「え、でも、ご迷惑では? 僕は今日たまたまご一緒しただけなので…………」
「そんなことないよ。友達が増えるのは嬉しいし、もっと話したい」
笑みを浮かべながら言う一華へ、優輝は何か言いたげな視線を送る。
「…………黒華先輩も一緒に食べるのでしょう?」
「俺はお前に話したとか言われたことないんだけど」
「私が言う前に黒華先輩が声をかけてくるじゃないですか。言う暇がありませんよ」
一華の言葉に「はっ」と言う顔を浮かべ、優輝は何故か考え込み始めた。
じぃっと彼を見る一華。そんな二人を無視し、真理が曄途に笑みを浮かべた。
「私達の事は特に気にしなくていいよ。白野君が私達と一緒にお昼を過ごしてもいいよって思ってくれたらで」
真理の言葉に、今だ遠慮している曄途。難しい顔を浮かべている彼に、優輝は目を細めゆっくりと手を伸ばした。かと思うと、曄途の持ってきた紙袋の中に入っている小袋を一つ、手に取った。
「なら、これ一つで手を打ってやる」
「え、手を打つとは?」
「おめぇと一緒に飯を食ってやるよ。これでお互い様だ、遠慮はいらん」
取った小袋には、カップに入っているチョコレートが入っていた。
三つ入っているうちの一つを取り出し、口に放り込む。手についたチョコをなめとり、「美味いな」と零した。
「勝手に何食べているんですか」
「止めなかったあいつが悪いんだろう。これであいつは俺と一緒に飯を食う事は約束された。俺と空という事は、おめぇらとも食うという事だ」
胸を張って言い切った彼の言い分は意味がわからず、一華は見せつけるようにため息を吐いた。
真理は目を輝かせ、ガッツポーズ。優輝を尊敬のまなざしで見る。
「そういう事だからな、お前は体育祭当日、俺達と飯を食う。約束な」
「え、え?」
話しの流れがわからず、曄途は二人からの圧に負け頷いてしまった。