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なんか変だな、と教室に入って思った。
妙にソワソワした感じ、不安げな感じ、興奮、緊張、そこに薄くかかる恐れのベール。どことなく暗い感じ。
優梨もそれを感じたらしく、近くにいた女子に
「ねえなんかあったの?」
と、聞いた。多分この子はナンシーだったはず。
「私も良くわかんないんだけど、地球を脱出するとか…」
「「えぇっ!?」」
地球を出る。
それは人類の最終手段だった。
どこにあるのか、果たしてあるのかもわからない人類が住める星を探して宇宙を彷徨うのだ。最悪の場合見つからずそのまま死ぬことになる。
だからこんなひどい状態になっても、ほぼ地球滅亡状態でも、地球を出なかったのだ。それでも地球を出るということは、相当やばい状態なんだろうと安易に想像がつく。
思わず優梨と顔を合わせる。優梨の顔は不安げだった。
「いやっ、ほんとかわかんないんだよ?でもジェーンが大人達が話したのを聞いたって言ってて…。」
優梨の顔を見たのかナンシーと思われる女子は慌てて言った。でもジェーンは学級委員で、そんな嘘をつくような子でもないし彼女の信頼度は高いからおそらく本当なんだろう。
その後の緊急集会で国際機関であるPMSA(惑星遷移保護協会)による発表が行われ、本当に地球を出ることが分かった。
なんでも、星を探す間の分の酸素ボンベを船に積むともうボンベを作れる酸素もないそうだ。3日後、地球を出るらしい。
急すぎない?それな。
やばいね、やばいよね。
そんな中身のない言葉を漏らして優梨と家に帰った。
リカも通知が来ていたらしく、荷造りを始めていた。