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めがさめた。

見える景色は真っ白で四角く、無機質な部屋。
そこにあるのは一つのライトと扉、机と椅子と小さな棚が一つ。どれもやはり真っ白で、極めてシンプルだ。
一つだけ黒いものは壁につけられたラジオだ。

病室ではない。特有の香りもしないし医療用ベットでもない。

毎朝起きるたびにここはどこだろうと考える。
そんなのはいつだって分かってるはずなのに、寝起きの脳みそはどうにもその情報を引っ張ってこれないらしい。
いや、きっとわかりたくないのだ。受け付けようとしていないのだ。


でもやっぱりここは私の望む場所とは違っていて、ホテルに泊まった時のように私はどこにいるのかと考える。
そして毎朝、同じ答えに辿り着き、ため息をつく。

「ピロリン♪おはようございます朝食です!」

配達ロボのチャイムが鳴る。合成音声に挨拶をされる毎朝。皮肉たっぷりに「どうもいいお天気ですね。ご機嫌いかがですか?」って言ってやった。無反応のロボットからやっぱり四角くて白いケースを受け取る。

中には銀色に白光りする缶と錠剤、白いタンブラーと紙袋。
その正体は、サバ缶と栄養剤、一日分の水とパン。朝食だ。

サバ缶にパンってどうなんだと思う。
でもパンは全員共通の上で(アレルギーの心配はいらない。現代では生まれたときに全アレルギー物質に対応する抗生物質を打ってもらえるのだ。)日本人はサバ缶らしい。じゃあインド人はカレーなんだろうか。そうなら不公平だ。絶対カレーのほうがいい。

っていうかなんで日本食代表がサバ缶なのよ。結構マニアックじゃない!?だいたい日本人全員サバ缶好きなわけないし!
……まあ結局どうせほぼ味しないし、なに出されても変わんないけど。
どのくらいイマイチかって言うと日本人なめるなってくらい味噌が味噌じゃない。あれを味噌味っていうとか全日本人敵に回してる。きっとカレー食べてるインド人もインドの恥とか思ってると思う。

そんなほぼ無味の食事を流し込んで考える。
今日は何をしようか。

ただこんな四角い空間に選択肢なんてほぼない。
部屋で寝てるか、部屋で政府に配られた謎の健康体操(体力低下を恐れてらしい)をするか。とりあえず着替えて、何かできることがないか考える。

窓の外を見ると無数のシェルターと沢山の機械。そして無限に広がる星空。星空と言うかもはや宇宙をそのまま見ている感じだ。

星空のもと人工の光があちこちで光っている。
一見すると夜であるこの風景。現在時刻は5時30分なのにも関わらず、日の光が昇る気配はない。

そう、ここには太陽はないのだ。

つまりここは、地球ではない。
ここは、どこなのか。


地球から何百万光年も離れた星、第二地球であるステラだ。