まだ、暑さが残る秋の始めごろ。



「ひよ。俺の手、離すなよ」



そう言って、
私、森永ひよら(もりながひよら)の手を握るのは。



父である、森永光輝(もりながこうき)



私の、──────〝好き〟だった人。



「ぅん、パパ」



今も、昔も、
私を『ひよ』と呼ぶ声が私は好きだ。



でもね、〝気づいた時には、〟
もう想いを伝えられない相手になってた。



だって、〝好きな人〟は私の父親だから。



それに対して、私は今、〝5歳の女の子〟



今と昔では、〝立場〟ってやつが違うから。



だから...........................もうっ。



〝前世〟に残してきた、
〝好き〟って、気持ちを伝えられない。