1、君と青かった夏が終わるね。


●もし、誰もいない世界に君とふたりになったら。


夕暮れの中、君と手を繋いだまま、
誰もいないホームで電車を待つのはなぜか切ない。
「ふたりきりの世界みたいだね」って、
君がそう言って笑ったから、
僕は君との夏がこのまま続けばいいのに。と返してあげた。



●もうそろそろ、特別になりたい。


ひまわり畑で誓った愛は、
きっとこれからも消えないはずだから、
揺れ続けている今の気持ちを君に伝えた。



●あわせてるつもりはないのに。


君と一緒になってから、
パフェの好みもコーヒーの濃さも、
すべて君色になりつつあるよ。



●君は安眠装置。


狭いソファで君に膝枕をしてもらうと、
オキシトシンが増量されている気がするのはなぜだろう。
これだけ、落ち着く人なんて、
もう、いないかも知れないね。



●果てしない約束。


潮風で錆びた自販機でコーラを買い、
テトラポッドの上でぼんやりと夕日を眺めている。

君はただ、前を見たまま、
「ずっと一緒がいい」と言ったから、
「すっと一緒だよ」と返したあと、
果てしない約束をしたなと思いつつ、
コーラを一口飲んだ。



●夢は終わり、また僕たちは現実に戻る。


最後の花火の花びらが水面から姿を消した。
花火が始まる前に言っていた、
君の悩みが少しでもぶり返さないようにしたいから、
僕はそっと君の手を握った。



●観覧車から夜の海を眺める。


観覧車から見る夜の港は、
無数の白い光で涼しく見え、
水面で光がそっと揺れている。

この景色を君と共有できるのは、
素直に嬉しいから、
今すぐに好きだって伝える決意を固めた。



●始まるきっかけが、ただ、ほしかった。


夏休みの教室には誰もいないはずなのに、
君は補講で一人きり、
この教室に閉じ込められていたから、
思い切って、一緒に帰ろうと誘うと、
君はいいよ、って簡単に微笑んでくれた。


●泣かないで。とは簡単に言いたくない。


君に泣き顔は似合わないよ。
だから、元気だしてって簡単に言いたいけど、
君が抱える問題は、
そんなに単純じゃないことを僕は知っている。

だから、今はただ、君の気持ちをすべて受け止めるよ。



●夕立は固まらない気持ちに拍車をかける。


カフェの中から窓に打ちつける夕立を眺めながら、
カウンター席で君と横並びでアイスカフェオレを飲んでいる。
まだ君とは恋人未満なのに、
ふたり世界に取り残された気分になり、
君を見ると、なにを悟ったのかわからないけど、微笑んでくれた。

だから、もし、
今、君に告白されたら受け入れちゃいそうだよ。

そんなこと、君はわかっているのかな。


●同じテンションでいられて嬉しいよ。


赤いブランコに座ると一気に熱が伝わり、
思わず笑うと、君もしっかりと笑ってくれた。

誰もいない炎天下の小さい公園で、
無邪気に同じようにはしゃいでくれる
君のことが好きだよ。



●待ち合わせに遅れても、大切にしてくれるからいいよ。


本当は夏なんて嫌いだった。
春に付き合い始め、夏に振られるのがジンクスだから。
だけど、この夏は久々にそのジンクスを払拭できそうだよ。

だから、君が待ち合わせよりも5分遅れてきたけど、
簡単に許してあげる。




●夏が楽しすぎて終わるのがつらすぎる。


君との楽しかった夏が終わってしまうね。
これから冷たくなっていくのはあまりにも寂しすぎるから、
このまま、夏の思い出をカラフルなマリンドームに閉じ込め、
それを飾ったまま、新たな君と一緒に作ったスノードームを横に飾りたい。




●片思いは夏になっても開かない。


一方通行の恋はまだ、実らないまま夏になってしまい、
買ったのにまだ、一度も着ていない
花柄のワンピースはハンガーにぶら下がったまま、
クーラーの清涼に揺れている。

だから、君との恋を諦めようとしたのに、
急に会う約束してくるなんて、
ずるいよ、そんなの。
嬉しいに決まってるじゃん。




●君と青かった夏が終わるね。


青色のワンピースが似合う君は落ち着いていて、
きれいな夏空に君の憂鬱な話は似合わないよ。

だけどね、僕は君のことを素直に守りたいと思った。




2、花火大会を遠くから見るのは、僕たちらしい気がするよ。



●夏はいつも息切れする。


泣きたくなる季節はいつも夏で、
原因はいつも春から無理しすぎるからなのは、
自分でもわかっているんだよ。

だけど、簡単に手は抜けないんだ。
生きるのが不器用だから。



●純粋な君も夕日に溶けそう。


深くなる夏を君と過ごす日々は最高すぎるよ。

肩を並べ、手を繋いで、
夕日に溶ける街を眺めている。

「このままがいい」と君がそう言ったから、
君と繋がったままの手を強く握った。



●それでも前を見続けるよ。


すべてのことをあきらめてしまいたい。

群れの帰り方を忘れた
はぐれたペンギンみたいに、
私は今、ものすごく迷っているから、
とりあえず、フラペチーノを飲んで、
甘さで正気を取り戻す。



●ふたりきりで海を眺める。


テトラポッドに座る君はぼんやりしていて、
髪の毛先が潮風で弱く揺れている。

夕日に照らされた君のその表情も美しいけど、
君の悩みをすべて消し去る魔法をかけてあげたい。



●すべて受け入れて、抱きしめるよ。


臆病な君が悩みを抱えることは、
夏に青がないくらい似合わないことだよ。

だから、君はもっと青くなっていいし、
僕はそんな君を受け入れるよ。

つまり、今の君に言いたいのは、
僕が生きる理由のすべては君だってことだよ。



●忙しさを忘れて、一緒に優しさを探そう。


君とサクサクのクロワッサンを食べている。

カフェの窓越しの世界は忙しいから、
アイスコーヒーを飲みながら、
君の気持ちが癒やされる優しい言葉を
一緒に探そう。




●夏の想いを思い出した瞬間、恋の魔法は愛に変わる。


タイムマシンに乗って、
君と僕、二人きりだった、
あのときのプールサイドに戻りたい。
君と素足を水に浸しながら、
水面に映る弱く揺れる入道雲を眺めていた。

「ねえ、好きって言ってよ」と君に言われて、
急に時が止まったかのように感じ、
君を見つめると、君の瞳は青さを映し出していた。
君は何度か細い足をバタつかせ水面を乱したあと、
僕は君の手を握り、尽きなかった想いを伝えた。
そんな君を僕は大切にしたいと思った。

今、壊した君との記憶をそっと取り戻すために、
素直に好きだと君に言って、僕は謝るよ。



●自分でも時々、答えがわからなくなる。


平凡が一番いいことはわかっているよ。

いちご畑で赤を摘み取るように、
コツコツとした生き方をすればいいとは思えない。

だから、夜のコンビニで思考停止していたら、
期間限定のアイスに目を奪われるんだ。

落ち着きがない自分を否定したいけど、
誰かに肯定してもらいたいくらい、
いつも、自分に甘いんだ。




●閉じ込められた世界の中で、僕たちはしっかり生きるしかない。


土砂降りの公園を屋根付きのベンチの中から、
君と座りながら雨が上がるのを待っている。
天気予報を当てにした僕らはバカらしくて、
お互いに几帳面に生きる僕たちは、
雨に笑われているねと君と話す時間は尊い。

「このまま閉じ込められたらどうしよう」と
君がぽつりと言ったから、
君となら閉じ込められてもいいよと、
素直な気持ちを君に伝えると、
君は微笑み返してくれたあと、僕の手を繋いだ。

だけど、その願いとは逆に、
降り続けている雨が雲の隙間から差し込み、
黄色でキラキラし始めた。
きっと、僕たちはこれからも上手くいくなって、
理由はわからないけど、微かな予感を抱いた。



●冬になるまでに、もっと、あなたのことを知りたい。


夏が深くなるにつれて、
誤解していたあなたの内側を深く知れて
私はすごく嬉しいよ。

だからね、
私をひまわり畑でつかまえて。



●オレンジ色の君は切ない。


夕日が射す誰もいない廊下で、
制服姿の君の悩みを聞き、
思わず立ち止まってしまった。

君の泣き顔もオレンジに染まっていたから、
何も考えずに君を抱きしめた。



●東京タワーは今日も深い青を貫く。


夏の夕暮れに光る東京タワーのことを
君は夢の塊だねと表現した。

君と手を繋いだまま、
電球色に染まった赤が、
深い青に伸びているのを、
君とただ、
このまま見ていたいなって思った。



●空虚な君の絶望癖は、すべて青と黄色でそっと塗りつぶしたい。


君が生まれた日の朝日の色を混ぜて、
君のつらいことを浄化してあげたい。

そんな特別な魔法なんてないから、
そんな空虚な雰囲気の君に対して、
できることは、
君が受け取って優しいと感じそうな、
弱くてぼやけた言葉しかかけられないんだ。

そんな自分がもどかしいよ。



●複雑な君の気持ちは、繊細でかわいい。


「わからない」という簡単な言葉で
君の複雑な気持ちを片付けたくない。

だから、熱帯夜の公園で君の言葉を聞けて、
僕はすごく嬉しいよ。

だって、暗証番号がわからなかった、
君の心を開くことができた気がするから。



●泣いていたのに、無理して笑っても、涙の輝きは消えない。


泣かないで。

君は最高にかわいいから、
夕立のように濡れた頬は似合わないよ。

無理して笑い顔を作っても、
透明な切なさは消えてないよ。



●君との思い出を一瞬にしたくない。



孤独に慣れた君に届く言葉は少ないと思うけど、
遠くで打ち上がり水面に落ちる
花火の花びらのように、
簡単に君との関係を消したくない。



●白が溶けるまで、君の悩みを聞かせて。


君は今、絶不調の中にいて、
それをカフェで打ち明けられて嬉しいよ。

カフェラテの泡が消えても、
君の辛さは消えないと思うから、
ただ、ずっと君の話をこのまま聞くよ。



●絶望から君色を消すために、しっかりと赤色の甘さを感じたい。


左手で握り潰したイチゴに、
練乳をかけて甘酸っぱくするように、
派手に振られた失恋を忘れるために、
君のLINEをそっとブロックした。


●夏の夜の鎮痛剤は、甘いアイスクリームしかない。


憂鬱な夏の夜を紛らわすために、
ローソンでアイスクリームを買ってしまった。

本当は痩せたいんだけど、
終わった恋の痛みで心は限界だから、
今日くらい、その甘さを許してあげよう。


●もうすぐ雨が上がりそうだね。


夕立が降って夏が進むたび、
私たちは大人に近づいているけど、
このまま時が過ぎても、
今、君と見ている銀色に濡れた街が、
夕日に照らされて、
きらめいている今を忘れたくない。



●別に未練なんてないけど、ふとしたときに、君の優しさを思い出してしまう。



あのときの涼しかった夏に

タイムスリップしたくなったのは、
あの日と重なるくらい、
噴水の透明感が涼しく感じたからだよ。

もし、戻れたら、もっと大切にするよ。

未だに優しさを思い出すなんて変だね。
さよなら、いとおしい人。



●花火大会を遠くから見るのは、僕たちらしい気がするよ。


君の悩みを忘れさせる魔法なんてないから、
思いつきで橋の上から花火を見ている。

川面に染まるカラフルは一瞬だけど、
君の彩りは永遠だと思うよ。

だから、元気だして。





3、そして、僕と君との新たな秋が始まる。



●君を思い出すのはいつも秋の始まり。


輝きを失った流星のように、
雨に打たれたビル街が、
アスファルトに流れてしまいそう。

自分のみすぼらしさが、
街の中では小さくて、
横断歩道の真ん中で立ち止まりたい。

夏が泣いた水たまりが、
秋風を連れてきて、
何も出来ない夏を振り返させる。

急にあなたの行方が知りたくなった。



●もう、何も惑わされない。


メビウスの輪をヘアバンドで作った。

テーブルに宇宙ができた瞬間、
彗星が最接近するニュースが流れた。

オレンジジュースを飲んで、
何も考えないで輪を見る。

今、目の前に
飛び込む情報に
惑わされて、
興味もないのに
星を探しに行きたくなった。

もう少しだけ、
流されない軸が欲しい。



●君の行方を知りたくなった。


終わった夏が忘れられず、
砂浜を歩いている。

ビーチハウスはとっくに壊されて
はしゃいだあの夏はもう終わってた。

君と駆け抜けた波打ち際、
穏やかな波が砂をさらっていく。

冷たい風。
遠くでなびくすすき。
高くなった透明な空。

過去が流れて、
涙が止まらない。

君はどこへ行ったの?



●君と二人だけで電車を待つ。


ガランとした駅の中は
ほのかにコンクリートの冷たさがある。
電車を待つのは、
青いプラスチックのベンチに座る
君と僕だけだった。

「連れて行ってほしい」
「どこへ?」
「どこかに。そんな気分なの」

君は改札を見て、
真剣そうに訴えた。

君の表情は
夏が終わったかのように
寂しかった。



●調子が悪い日も君は優しい。


「調子悪い日は、大人しくしたらいいよ」

そう言って、
君はマグカップを手元に置いた。
コーヒーの香りが立ち、
香ばしい甘さが空気を凛とさせた。

頭がまわらないけど
グズだと思わないで欲しい。
そう思い、
コーヒーを一口飲んだ。

礼を言うと、
君は微笑み、
そっと部屋を出ていった。



●たまにつらくなるときがあるんだ。


深くなった緑のゆらめきを
バルコニーから眺めている。

煙草がもうすぐ燃え尽きそうだ。
フィルターぎりぎりまで
吸うのは身体に良くないけど
そのまま吸っていたい気分なんだよ。

先なんてわからないから
今を生きるだけだけど
たまに辛くなる。

吸い終わってすぐ、
遠くで踏切が鳴り始めた。



●弱冷車のなかで君を思い出す。


電車の中は弱冷で
機械的な清涼を浴びている。

ないものねだるのって、
解散したバンドの新曲を
期待するみたいだ。

寒がりな君は
弱冷房車を選ぶことを
思い出した。

寂しさ隠すのって、
二度と会えない君に
期待するみたいだ。

戻れないから、
イヤホンで
この曲、
聴いているんだよ。



●いつの間にか大人になってしまった。


秋雨がガラスを打ち付けている。
日が短くなったから
すでに街灯が目立ち始めている。

カフェの中は変わらず
大人しくざわついている。
Mac bookの画面は
何も変わらず
コーヒーだけが減っていた。

別に好きで大人やってるワケじゃないんだよ。

キーボードで打ち込んだ後、
deleteを連打した。



●君と離れる瞬間はいつもスローモーション


ホームで新幹線のガラス越しに
手と手を合せた。
君は目で何かを訴えていた。
発車ベルが鳴ったから、
僕はそっと手を離した。

あの時、小指と小指で誓ったことや
これまでのことが夢になるのは、
炭酸が徐々に抜けるようなものだ。

新幹線がゆっくり動き出した時、
君は小さく手を振った。



●君と夜のベイエリアを歩く。


夜のベイエリアは波の音が響き、
オレンジの街灯が
ファンタジーを作っていた。

ショートボブが踊るくらい
駆け抜ける君は、
最強にやんちゃだね。

大きな声で君を呼んだら、
君は振り向き
僕を手招きした。

だから僕も
君の仕草を真似して
君を手招きしたら、

「もう」と言う声が響いた。


●出会って3か月経つね。


電球色したオープンテラスで
君と飲んでいる。
少し冷たい風が心地よかった。

出会ってもう、
3ヶ月経つねって
君は言った。
君はカルアミルクで
もう、赤かった。

ソルティドッグを
飲み干したあと
夏はもう終わってたなと
思いながら
グラスを置いた。

ねえ、最高だねって
君は言った。



●夏が終わり、秋が始まっても変われない。


秋の始まりはなぜか寂しくて、
夏の名残を海岸線の道を歩きながら感じる。

サンダルはそのままで、
風が吹き、なびくワンピースの裾。

低音と一緒に追い抜かれた
オープンカーの後部を見つめる。

別に真面目に生きているわけじゃない。

だけど、毎日に満足できないのは、
季節が変わっても変わらないままだね。

胸が重くなって、急に立ち止まった。
涙が頬を伝っていく感触。

どうして、こんな気持ちなんだろう。



●自分の意志で今日を作りたい。


朝のカフェでぼんやり外を眺める。

ゆっくりした自分の意識を確かめる。
マグカップのグゲは穏やかに立ち、
コーヒーの匂いで眠りの境界線を断つ。

窓越しの街は静かなままで、
今日、これからどこかへ旅に出たくなる。

別にひとりは寂しくなんかない。
無限に思える今日を
キャンディのように軽くしたい。

一口飲むと苦味がそっと優しく包んだ。

4桁の暗号を言い合える人がほしくなった。



●秋の始まりも二人きり。


夏の名残で今日も君と公園のベンチに座り、
他愛のないことを話している。

「もし、私がいなくなったらどうする?」と
整ったボブを揺らして、君はそう言った。

宇宙の風とか、輪廻を超えるくらい、
君の瞳は青く輝いているから、
泡の中に包んであげたくなった。

少しだけ寂しくなった公園は貸し切りで、
ふたりだけの秋が始まったような気がした。

モンブランをほぐすように
君のことを丁寧に扱いたいと思った。



●このまま、自転車で駆け抜けたい。


遠くで鳴る踏切の音が静かな街に響く。
自転車でいつものように中心地を目指し、
少しだけひんやりした空気を切り裂く。

シャッターがしまった商店街は
いつまでもレトロのままで時が止まっている。

今のままで十分だと、漠然とたまに思う。

いつまでこんなこと続けるんだろう。
とりあえず、次の休みはどこかに行きたい。

ショッピングモールだけじゃ満たされないから、
誰もいない展望台で思いを馳せたい。
そして、ぼんやりして何もかも忘れたい。



●ストロベリーな日々を過ごしたい。


スニーカーの紐を締め直して、
眼の前の大きな川をまたぐ橋を見ると、
車道は今日も車で混雑していた。

朝の香りは冷たい空気で引き立っていて、
もう数ヶ月もすればコートを着て、
雪見をきっとしているんだろうね。

だから、ゆっくり歩いていくよ。
今日も穏やかに過ごしたいから。

単純に過ごすにはルールはいらないよね。

ストロベリームーンのように、
甘く、切なく、優しい。

そんな、世界だったらきっと、
毎日が楽しいんだろうね。



●オレンジにイエローゴールドが溶ける。


オレンジ色の君は美しくて、
夕暮れと寂れたこの街と一緒に溶けてしまいそうだ。

二人しかいない帰り道は世界の果てみたいで、
君との会話はコンスタントに続く。

君が大切そうに腕につけている
イエローゴールドの小さな時計の淵が反射して、
瞬間的にきらめきを放っている。

揺れている君の気持ちを感じて、
思わず君の腕をそっと掴んだ。

君は、はっとした表情をしたあと、
少しだけ冷たいかz背が君との間に吹き抜けた。



●これから先を考える前にずっとこうしていたい。


憂鬱をカフェで溶かしたい。
熱いコーヒーとアイスクリームでゆっくり。

ひとりでいるのは、もう慣れたけど、
偶に冷たいことを誰かに言って欲しくなる。

積み重なった思い出は簡単に画素数が下がり、
今の自分に上書きされていく。
だけど、苦い思い出だけは留まり続け、
気持ちを重くするのはなぜだろう?

スプーンでゆっくり掬いましょう。
何もかも忘れるために、
無心を心がけてね。



●季節が変わり始めても、変われない自分にモヤモヤする。


傷ついた心をそっと引き締めるために、
少しだけ冷たくなった秋の砂浜で
ぼやけた海を眺めている。

手元に置いたコーラはわずかで、
空飛ぶクジラが来るまで待てなさそうだ。

昨日の夜に降り注いだ星屑を探そうと、
両手で砂をすくい、
指と指の間で感触を確かめたけど、
つまらなさが旨を締め付ける。

何をやっても上手くいかない時は、
どうやってやり過ごしたかを思い出せなくて、
最後の一口、コーラを飲んだけど、
何も変わらないから、そっといじけ続けよう。

気が済むまで、ずっと。



●現実逃避は簡単だけど、永遠は簡単じゃない。


湖まで続く坂道を私と君は歩いて下っている。
温泉街まで続くこの道は二人だけの日常で、
あと、半年でこの街を出ることになる。

昨日の夕方、この坂を登っている途中で、
君と喧嘩をしたから、無口なままで歩いている。

愛は自然体でいれる人と上手くいくって、
昨日の夜、そんなツイートを見たけど、
君と離れる日常になったら、
お互い、自然体でいれるのかな。

湖は朝日でキラキラしていて眩しい。
坂の途中で急に君が立ち止まった。

だから、私も立ち止まって君を見つめた。
「ずっと、一緒にいよう」と
君はそう言って、私を抱きしめた。



●君とは離れ離れ。


季節は進み、コスモスはきれいに咲き、
離れ離れの私たちは日常に追われる。

続かなかったやり取りをふと思い出すと、
胸がそっと苦しくなる。

君との約束は渦の中に巻き込まれたみたいに
何もなかったことになったんだろうね。

大人になると、すれ違いが進み、
距離は非現実を作る。

だから、思い切って、君へのメッセージを綴る。
変わらないアドレスにしたためて。

『君は変われましたか』
私はそのままだよ。



●夢の中の君はもういない。


夢で君と会ったから、
少しだけ虚しい朝だよ。

楽しいことを瓶に詰め込んで、
そっとした日々を過ごしたい。

だけど、忙しい日々は変わらなくて、
メリーゴーランドのぐるぐるのように
華やかさを維持するのに意固地になっている。

もし、あの夏の青春が溶けなければ、
今頃、君との生活はどうなっていたのだろう。

閉園前のキラキラの遊園地を
二人で歩いたのを思い出した。

素直じゃない今の自分を見たら、
君はなんて言うだろう?



●いつもの憂鬱は寂しさが原因。


ホームは冷たく、朝霧で霞んでいる。
まだ眠っている小さいこの街から、
君に会うために大都会へ向かうよ。

ベンチでひとりきり、
ぼんやりと何度も読み込んだ本を読んでいる。

夏が過ぎ去ったこの時期は
いつも、寂しさが旨を占めるけど、
心が満たされるような気がするよ。

大好きな君は何て言うのか、
想像して、結局、本の内容は頭に入ってこない。
遠くから列車の音がする。

霞んだ先を見ると電球色が近づいてきた。




●君と一緒に紡ぎたい。


いつものように朝焼けの中を歩いている。

並木道はまだ深い緑のままで、
キラキラと弱く輝いている。
秋の始まりも君と一緒にいるのが当たり前になり、
価値観が変わりつつあるよ。

巡る季節の中で一緒にきれいな景色を眺め、
きっと、最高のうちに3か月が過ぎて、
今年が終わればいい。

オーロラを眺めるときみたいに
言葉を交わさないで気持ちを共有して、
その積み重ねでずっと一緒だったらいい。

そうやって、
青い未来を確実にできたらいいね。



●おはよう現実。昨日の夜はファンタジーの終わりで胸が裂けるくらい憂鬱だった。


ネオン色に輝く街を交差点の隅のビルから眺めている。
デニーズの店内は静かで夜が深まるよ。

コーヒーを飲み込むと少しだけ、
寂しさが滲んだけれど、
iPhoneを指先でなぞり、
出来たばかりの思い出をさかのぼるよ。

夜行バスの発車は、まだ先になるから、
魔法が元に戻って、
空飛ぶペンギンの群れが何曲に戻るように
憂鬱な現実がもうすぐ戻ってくる。

そして、寝起きにふと思うんだろう。
明日が来てしまったことを。

また、ファンタジーを取り戻すために
日常をしっかりとこなすよ。



●穏やかに日々は過ぎていく。


楽しいことを君とたくさん作って、
ミラクルな暮らしをしよう。

外はいつものように騒がしいから、
炭酸水を飲みながら切り離そう。
日々、秋は深まっていくけど、
心の隙間は埋まっていくよ。

世界の片隅に思えるくらい、
この家は二人だけの楽しい空間だね。
穏やかな日々が過ぎ去るだけでいい。

それ以外は何もいらないから、
都市の孤独とは無縁になれるね。

だから、何が言いたいかと言うと、
君が好きだってことだよ。



●秋雨で心が揺れる。


言いたいことは言ったつもりだけど、
やりきれない思いが積もったままだよ。

だから、今朝もコーヒーを飲んで、
窓越しに憂鬱な秋雨を眺めている。

あなたのことになるとついムキになって、
余計なことばかり口に出してしまう。

もし、砂浜で昨日の星屑を集められるなら、
きっと、今日は無心になって、
たくさん集められそうな気がする。
だから、コーヒーを飲みきったら、
謝りのメッセージを慎重に作ろう。

昨日はごめんね。



●秋色の君をパッケージしたい。


少し冷たい風の所為で公園の季節は進むよ。

君とベンチに座る時間は無限に感じ、
尽きない冗談で二人の世界を作っている。

君は話しながらパーカーの紐をいじっている。
僕らはいつも死に向かって生きているのが、
たまに不思議に思い、虚しくなって、
気持ちが冷たくなるんだ。

焼いたマシュマロのように
ゆっくりとろけて、
素敵なシーンで終われたらいいよね。

冷たい風で木々はざわめき、
君のブラウンのショートボブが弱く揺れる。

そんなことを口に出すのが、
バカらしいくらい、
君の微笑みは無敵だね。



●春になったら、この街をでなくちゃならない。


誰もいない公園の隅のベンチで
夏の思い出を君とiPhoneで辿っている。

高台にある公園からは港と海の
こじんまりとした世界が見えている。

テトラポットに座る君は綺麗で、
あのとき、ゆっくり眺めた海を思い出すと、
切なくなるのは、なぜだろう?

君と住んでいるこの小さな港町は
いつものように穏やかで、
忘れた頃に冷たい風が吹くと、街は潮で香る。
「ずっと一緒にいたいね」
君がポツリとそう言った。

君を見ると君は先に広がる海を
じっと眺めながら、
何かを決意しているように見えた。



●たまに息が詰まる。


色づき始めた街路樹の木陰は少し冷たい。

先に見えているビル群のグレーは無機質に並び、
何も考えず、今日もそこへ向かう。

生きる意味ってなんだろうって、
ときどき、ふと考えてしまう。

一度、立ち止まり、深呼吸をする。

懐かしいあおさが蘇り、胸を締め付ける。
もう少し、明るい性格になりたかった。
マーケットに山積みされたレモンのように。

日常に追われて、自分の世界が沈む。
ドキドキすることが思い出せないから、
次の休日はどこか遠くへ行こう。



●恋した気持ちを君はきっと知らない。


君の声を聞くだけで
キュンとしてしまうのは
それだけ意識している証拠だよ。

秋の冷たい空気の中、
朝の静かな通学路を歩くのは
些細な非日常でファンタジーだね。

制服の癖に大人びている君は
不条理な社会に憂鬱で、
そんなに考えすぎないでよって、時々思う。

それでも社会は仕方なく廻っているから、
君がそうなるのも仕方ないよね。

そんな君に今、告白したらどうなるんだろう。

毎朝のこの関係がずっと続けばいいけど、
憂鬱な恋の気持ちは満たされない。




【初出】
 1章
 完全書き下ろし

 2章 
 蜃気羊Twitter(@shinkiyoh)
 https://twitter.com/shinkiyoh
 
 2023.7.22~8.13


 3章 
 蜃気羊Twitter(@shinkiyoh)
 https://twitter.com/shinkiyoh
 
 2020.9.3
2021.9.1~9.14
2022.9.1~9.28