「......っ、でも、俺には、」



そう言う音季くんの、
指先は、ほんの少し震えていて。



「大丈夫、願ったから。1分前に戻れたら、
〝音季くんに力が戻りますように〟って」



音季くんの震えを、
和らげるように、握った手を強くしながら。



しっかりと、音季くんの目を見つめた。



「.........わかった、」



ほんの少し、
腑に落ちなさそうな音季くんだけど。



音季くんが、──────願った瞬間。



溺れていたハズの男の子が、
近くの家族連れの近くに戻っていた。



それを見た音季くんは.....................



「っ、まじかよ、」



そう言葉を落としながら、
安心しきった様子の音季くん。



「ね、音季くん。出来たでしょ?
この力はね、やっぱり音季くんのものだよ」



人は誰でも、
〝1分前に戻れたら、〟って。



考えることもあるかもしれない。



だけどね、その力は、
誰よりも必要な人が持つべきだと思うんだ。





fin.