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それから数日。
未央が菓子折をさげて、八羽神社の社務所を訪れた。
正しく憑きものの取れた顔で、彼女は散々と礼を述べる。
彼女の友達も、あの先輩とは別れ、今は彼氏を募集中だそうだ。
先輩も先輩で、一応は反省しているらしい。
土下座での謝罪があり、ひとまずそれで手打ちにしたと言う。
「これ、バイトで貯めてきたお金なんですけど、ほんっとうにお世話になったので多めに包んでます!」
お祓いの代金として受け取る初穂料には、封筒が膨れるほどの額が入っていた。
学生が用意するには、仕事に節約に、かなりの努力がいりそうな額だ。
貧乏性が結衣には染み付いていた。思わずくらりとしかけるけれど、鉄の心で、結衣はそれを差し返す。
「このお金で地元に帰られたらどうですか? きっと、幼馴染さんが待たれてますよ」
「……宮司さん、そんな気遣いまでしてくれるんですね。もうなんて言ったらいいか……。でもでも、だからこそお礼をしないわけには」
「本当に結構ですよ。あの、じゃあ。代金の代わりと言ってはなんですけど、一つお願いしてもいいですか?」
なんなりと、と未央は大仰に首を縦に振った。
建物の修繕なんて無茶を頼んでも引き受けてくれそうな勢いだが、それほど難しい話ではない。
結衣は、隣に立っていた恋時とアイコンタクトを取る。
「竹谷さん。どうか、口コミをお寄せてくださいませんか」
話を、彼が引き取った。
「え、それくらいでいいんですか? もちろん喜んでさせていただきますけど……」
「それはそれは、ありがとうございます! それからTwitterアカウントはお持ちですか? もしくはインスタでも結構なのですが、八羽神社のアカウントをフォローいただき、お祓いの感想を事細かに書いたうえで、拡散をしてほしいのです。
できれば、縁結びに御利益があることをこれでもかとアピールしてください。そして添付画像にはこれを」
恋時のやたら綺麗な目に、円マークがらんらん、否、ちゃりんちゃりん踊る。
もはや赤色の目が、黄金色に見えた。
受付台から身を乗り出し、未央に詰め寄る彼の耳を、結衣は引っ張る。
「貧乏神社が知れるでしょ!」
今は確かにお金がない、ぼろ神社だ。
でも、きっといつかは立派な縁結び神社。