「ルーナさん、今です」

「はっはいっ!!」


スカッーーー!

あっあれ?!


『経験値5000のレアモンスター【メタルスライモン】が逃亡しました』


というメッセージが出たわけでは無いが、仮にこれがRPGのゲーム画面上であったなら、恐らくそのような文面が表示されていたことだろう。


「ああっ!惜しいーっ」

「行っちまったなー」


【踊り子】のテイルと、【武闘家】のダンが、超速力で逃げ去っていくレアモンスターの背中に手を伸ばす。

途端にモンスターはその場から姿を消してしまった。


「み、皆さん……私が空振りしてしまったばかりに………」

「まあまあ。アイツ避けるの上手いし」

「そうそう。経験値5000は惜しいがまたその内出くわすだろう」

「テイルくん、ダンさん……」


2人の優しい眼差しにホッと胸を撫で下ろしかけた、その時だった。


「全く仕方なくなどありませんね。今のは敵の不意をついた絶好のタイミングでした」

「う……」


はいはい……。
わかってますよ、わかってますよーー!!

なんて言い返したい衝動を抑えて、その人物へと振り向く私の名はーー

この物語の主人公、ルーナ・イリエと申します…!!

一応これでもこの異世界で【勇者】を名乗っておりまして。

それなりの地位と名誉を手に……する予定ではあるのですが。