五
文化祭は、盛況のうちに終わった。
反応は上々だった。他クラスの友達もわざわざ教室まで来て賞賛してくれた。はるからは長文の感想をメッセージで貰った。そしてなにより、幕が下りた後、挨拶のため壇上に出た際に受けた拍手は、まだ耳奥で響いているほどだった。
熱が冷めやらぬまま身体に残っていた。そのせいか、祭りのあと、放課後の学校はほぼ無人。嘘のように静まり返っているのに、どこか落ち着かない。握っているビニール袋のように、胸がざわめいていた。
「さっきまでの主役がこれだぜ? 不遇なもんだよな」
隣で、山田が嘆息を漏らす。
もう何度目か、体育館からゴミ捨て場までの往復の最中だった。いわゆる雑用だ。うっかり長く校内にとどまっていたら、運悪く先生に捕まった。
「山田。スポットライトどころか、ハエたかってるぞ」
「まったく。クラスの奴ら、今頃打ち上げ楽しんでんだろうな」
「荒れんなよ。これでラストだし」
集積庫は既に山のように袋が積み上がっていた。崩さないよう慎重に、最後のゴミ袋を入れ込める。そして扉を強引に閉じた。鉄のぶつかる音が響く。山田は色々な想いが混じっているだろう長いため息をついて、
「今度こそ、お疲れ」
手首を曲げて、小さく握り拳を作る。俺は、手の甲を合わせた。それでようやく、達成感らしいものが生まれた。
学校が小高いところにあることもあった。冷たい空気を吸うと、頭に籠もっていた蒸気が霧散していく。そして、脳にはっきりと残ったのはほん一つ。
「よし。じゃあ俺たちも打ち上げ行こうぜ。駅前のファミレス貸し切りだってよ、バイトしてる奴のツテで。うちの店長がケーキ差し入れたらしい、頼んでもねーのに」
栗原さんの顔が、声が浮かんでいた。
すっかり暗い夜空を見上げる。別棟の教室に明かりがついているのに気がついて瞳孔が開いた。それも自分たちの使っていた教室だ。窓枠にぼんやりと小さな影が映る。
もしまだそこにいるのなら。途端に、やりたいことが見つかった。