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週が明けた月曜日、夕方のホームルームはいつもより長引いていた。

担任が教卓に立って、配ったプリントの説明をする。

しかし、そんな説明は馬耳東風聞き流して、クラスメイトたちは各々ざわめいていた。それも仕方がない。文化祭開催のお知らせ、プリントのタイトルを見てしまったのなら。

お店がしたい、おばけ屋敷、いやいやガーデニング、勝手な意見が飛び交う。

そんな中私は、ひっそりと、それでも必死に胸の動悸と戦っていた。手を当てて、その熱で少しだけ静める。足の震えも床にぴったりつま先をつけて、なかったことにした。

ついに与太話を見兼ねた先生が一喝する。

途端に静まり返ったクラスに、二年生は劇のみとの宣告があった。再び賛否がひそひそと飛び交い出すが、こんな反応は慣れているのだろう。顔色も変えず、強い声音でそれは制された。そして続けて、先生は実行委員の立候補を求めた。

誰も手を挙げなかった。さっきまで騒いでいたのが嘘のように、みんながしんとする。周りを目で伺う。

私は、自分の心臓の音が聞こえていないか心配になるほど、緊張していた。ここに及んでは、小細工ではもう止められそうもない。それでも、やる。決めたのだ。一際大きく唾を飲みこんで、私は立ち上がった。

「わ、私、その、やります。委員長」

強張る手足を動かして、私は壇上まで上がる。クラスメイトみんなが驚いているのが、見渡して分かった。目を伏せたくなる。叶うなら逃げてしまいたい。けれど、ここでは終われない。性に合わない立候補をした目的は、ここからだ。

彼を見つめ、いや眇めるように捉えて

「副委員長は、今宮くん。お願いします!」

問答無用、指名する。

心底、意外そうな顔をしていた。そもそもまだ私の立候補に頭が追いついていないらしい。

もう夫婦じゃん、噂どおりか、とクラス全体がにわかに色めき立つ。そんな声に促され、彼はまだ戸惑いを隠せない様子、周りを見渡しながら席を立った。自分でやったとはいえ恥ずかしい。推薦人たる茉莉ちゃんに目を逃す。親指を立てて、にっと笑っていた。

それで少し緊張が和らいだ。

今宮くんは私の隣まで来て、全員に頭を下げる。それから小声で「どういうこと」と聞いた。ここまで予想されていなかったとは少し面白い。

「やってみたかったんだよ、委員」

嘘。向いていないことも分かっている。

ただチャンスだと思ったのだ。

私が彼を好きとかどうとか、そういう不安定な全てを確かめる、大きな機会。

イベントごとを逃す手はない、とは茉莉ちゃんのアドバイス。なにも委員長である必要はなかったかもしれない。けれど、それくらい追い込まないと楽な方へ流れてしまう気がした。これが人付き合い、人前、恋愛、全て初心者なりのやり方だ。少なくとも、この際全て片付けてしまいたいくらいの気持ちは持ってきた。

私はぐっと踵を踏みつけて、前を向く。

「えっと、不束ですが、よ、よろしくお願いします!」

全部これからだ。