舞子のニヤついた笑みにハッと我に返って慌てて左右に首を振った。


「な、なに言ってんの? そんなことないし」


早口に言って難しい本に視線を戻す。
しかし、舞子が変なことを言うから妙に気になってしまって集中できない。


「最近の美保はなぁんか綺麗になったなぁと思ってたんだよね! 絶対に好きな人ができたよね!? あ、もしかして両思いになってるとか!?」


どんどん妄想を膨らませていく舞子を慌てて止める。


「そんなことないって言ってるでしょ? 大きな声で、やめてよね」


教室中に聞こえるような声で騒ぐものだから、周りの目が気になってしまう。


「なぁんで隠すの? 恋って別に恥ずかしいことじゃないのに」


そうかもしれない。
だけど、私の司の関係は少し特別なものだ。

舞子からなれそめを聞かれたとしても、正直に答える自信もない。


「だから、そんなんじゃないってば」


恥ずかしくてうつむく私を、教室の隅から剛がジッと見つめていたのだった。