☆☆☆

(本、読めたよ!)


司がそう言ってきたのは3日後のことだった。


(もう読み終わったの!?)


あの分厚い本を3日ほどで読み終わってしまうとは思っていなくて驚く。
いくら家にいて時間があっても、そんなに早く読み終わることはないだろうと思っていた。


(すっごく面白かったから、一気に読んだんだよ)

(そうなんだ! やっぱり面白かった?)

(最高だったよ。主人公が空を飛んでカラスに突かれるシーンはちょっと笑った)


よかった。
ちゃんと読んでくれているみたいだ。


(ごめん。私まだ次の作品を選べてないんだよね)


司の家に行くのはまだ先になると思っていた。


(焦らなくていいよ。でも、少しだけ焦ってもいいよ)


どういうことだろう?
普段の司なら人が気にするようなことは言わないはずだけれど。
なんとなく違和感を覚えて(どうかしたの?)と質問する。

すると少しの沈黙のあと(本当は早く美保に会いたくて、一生懸命読んだんだ)と照れた声が聞こえてきた。
その言葉に私の顔が一気に熱を持つ。
分厚い本を選んでしまったことを後悔したときのことを思い出す。

あの時、下心を感じていたのは自分だけじゃなかったんだ。


(それなら私も早く次の本を見つけてくるね。それで、司に会いにいく)


普段は恥ずかしてく言葉にできないことだけれど、ここ最近は司や司の叔母さんの影響もあって、こういうことも言えるようになってきた。
といっても、司以外の人へ向けてはまだ無理だけれど。


(うん。楽しみにしてる)


司の楽しげな声に私は頷いたのだった。