素直な気持ちはそうだった。
毎日でも司に会いに行きたい。

もしかしたら昨日食べそこねてしまったフルーツタルトも残っているかもしれない。
叔母さんの作ったお菓子と本という組み合わせもとても魅力的だった。

でも……。


(ううん。今日はやめておこうかな)


私は司からの誘いを断っていた。
ただでさえドキドキしているのに、毎日司に会うと自分がどうにかなってしまうんじゃないかと不安がよぎったのだ。


(そっか。さすがに毎日はキツイよね)


少し残念そうな声。


(嫌とかじゃないからね? 今日は、借りてきた本を読みたいから)


慌てて言い訳を考える。


(わかってるよ。じゃあ、次に会うときにお互いに好きな本を紹介するっていうのはどう?)


おもしろそうだ。
自分の好みで本を選んでいると、どうしても偏りが生まれてしまう。
できればより好みすることなくどんな本とでも出会ってみたかった。


(いいね。一冊選んで持っていくね)

(僕も、とっておきの本を選んで待ってるよ)


じゃあねと挨拶を交わして歩き出す。
そして、次に会う約束を簡単に交わしてしまったことに気がついて、また心臓が早鐘を打ち始めたのだった。