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その日の帰りは文庫本3冊分の重みを感じながら帰宅することとなった。


(美保、お疲れ様)


司はタイミングを見計らったかのように、私が公園にさしかかると声をかけてくる。
きっと、時計の確認を怠らないのだろう。

司があのベッドの上で時計を見つめて今か今かと待っている様子を想像すると、胸の辺りが熱くなってくる。


(うん。司もね)


いつもどおりフェンスによりかかり、風の声部を開始する。
平日は毎日ここを通るから、風の声部は毎日活動していることになる。
そう考えると結構本格的な部活動だ。


(今日の学校はどうだった?)

(まぁまぁかな。今日は図書室に行ってきた)

(美保はどんな本を読むの?)

(色々読むよ。小説ばかりだけど)


自己啓発書や難しい本はあまり読まない。
読書は私にとって娯楽そのものだ。


(僕も本は好きだよ。って、知ってるか)

(うん、知ってる)

(よかったら、今日もうちに来ない? 面白い本があったら教えてよ)


その誘いに心臓がドクンッと跳ねる。
胸が苦しくなって顔が熱くなるのを感じる。
行きたい。