その日の夜は昔のホラー映画のリメイクをしていた。
なんでもとても有名な映画らしいけれど、私達が生まれた頃にはすでにテレビでホラーを流さない時代になっていたので、観るのはこれが初めてだった。


《舞子:ね、マジで今日の映画怖いんだけど!》

《美保:すっごい有名な映画のリメイクらしいから、これで怖くなかったら詐欺だよ》


私はスマホを握りしめてリビングのソファに座り、テレビ画面に見入っていた。
怖いものが苦手な両親は映画が始まると同時に寝室に閉じこもってしまっている。

寝室にもテレビがあるから、時折ふたりの笑い声がリビングまで聞こえてきた。
今の私はそんな楽しげな声にさえビクついてしまう。
だから、こうして舞子とずっとメッセージのやりとりをして気分を紛らわしていた。


《舞子:このあと絶対に幽霊でるじゃん!》

《美保:出る出る、絶対出るよね!》


画面はクライマックス間近で、幽霊屋敷の真相がわかったところだった。
けれど主人公たちは人外な力で屋敷に閉じ込められてまま、出ることができない。

最初に6人いた仲間たちは次々と幽霊に連れ去られてしまい、今は主人公とヒロインのふたりしか残っていない。


《舞子:怖いって! 本当に最後まで観るの?》

《美保:ここまで見たんだから、観るに決まってるでしょ!》

《舞子:え~、私もう嫌だよ。まだお風呂にも入ってないのに、怖くて入れなくなっちゃうよ!》